
こんにちは。日本建築塗装職人の会の青木です。
このコラムでは私の20年間700社以上の塗装店経営・経営指導経験から、塗装職人社長が経営を成功させるために、根底において大切なことを書かせて頂きました。
塗装店経営は思った以上に大変です。その塗装店経営を成功させるためには、現場での仕事はもちろん、心の持ち方・人生観が、本当に大事です。
山あり、谷ありの塗装店経営ですが、このコラムを読んでいただくことで、まっすぐに、塗装店経営を前進させていく意欲に満ちあふれてくることと思います。
さあどうぞ、じっくりお読みくださいね。
まえがき
塗装職人という人生は、実は想像以上に過酷です。
あなたもこれまでに何度も心が折れそうになったのではないでしょうか。
仕上げでダメ出しをされ、プライドが傷つき、人工がオーバーし、胸と財布が痛んだ日。
元請けに施工後に値段を決められ、悔しさと不安に震える夜。
育てた弟子が地元で独立して、裏切られ魂が切り刻まれたあの時。
休みの日でも、家族はショッピング。自分だけ仲間外れにされて孤独を覚えた瞬間。
昼夜問わず、仕事に追われているのに、赤字決算続き。
自分のこだわりが伝わらず、決まっても値段を下げられる相見積の日々。
子どもの学校の書類に「職業サラリーマン」と記され、胸が痛んだ日。
真剣にやっているのに「手抜きではないか」と疑われた現場。
良心で補修しても、追加費用をもらえなかった工事。
「塗装の仕事は誰でもできる」と軽く見られる言葉。
少年時代の不良経験から社会に出づらかった過去。
そして「先が見えない」と感じてしまう塗装業界。
塗装職人の人生は、心とお金の両方を削られることが多く、自尊心をなくしやすい道でもあります。
けれども、どうか忘れないでください!
様々な苦労をすべて受け入れ、ただ黙々と仕事をし続けるあなたは――
人間として美しい人生を生きているのです。
この本は、偉そうな経営の教科書ではありません。
塗装業界で生き抜いてきた先人たちの知恵をまとめた「心得」です。
読み進めるうちにきっと、あなたは「これまでの人生は間違っていなかった」と思えるはずです。
そして、眠っていた誇りがもう一度湧き上がってくるでしょう。
どうかこの本が、あなたの人生を支える小さな灯(あかり)となりますように。
そしてその灯を、仲間の塗装職人にも分け与えていただければ幸いです。
第一の心得・仕上げでダメ出しをされたときに‥
仕上げに自信をもって引き渡した現場。
しかし、お客様や元請けから「ここが気になる」「もう一度やり直してほしい」と言われることがあります。
プライドをかけて仕上げた部分を指摘されるのは、心に突き刺さるものです。
「自分の技術はまだ未熟なのか」と悔しさに震えると同時に、人工がオーバーし、赤字を覚悟せざるを得ない状況に。
心とお金の両方が傷つく、この瞬間は、塗装職人にとって最もつらい場面のひとつでしょう。
ダメ出しは否定ではなく「伸びしろの指摘」と受け入れよう
しかし、ダメ出しは「否定」ではなく「伸びしろの指摘」です。
真剣に取り組んだからこそ、その先にある小さな差異が見えるのです。
職人の仕事は「完成」ではなく「精進」です。
何十年の経験を積んでも、最後に「まだまだだな」と気づかされる。
その繰り返しが、あなたを「ただの職人」から「本物の匠」へと育てていきます。
仏教では「不完全だからこそ、成長がある」と説かれます。
同じように、ダメ出しは「あなたが前に進むための贈り物」と捉えてみてください。
3つの経営改善
一方で、精神論だけでは生活は守れません。
人工がオーバーし続ければ、会社の経営は立ち行かなくなります。
経営戦略として大切なのは、次の3点です。
- 仕上げの基準を明文化する
社内で「どこまでやれば合格か」を共有しておく。マニュアル化は赤字削減につながります。 - 顧客と“合意の線引き”を早めに行う
工事完了の前に「確認チェック」を入れる。最終段階での手直しを減らせます。 - 保証制度やパッケージ化
ダメ出し対応を「保証制度」に含めることで、追加人工を説明しやすくなります。
「無償補修」と「有償補修」の線引きも、制度として定義しておくのです。
こうした仕組みを持つことで、職人が心で傷つくことも、会社がお金で傷つくことも、減らしていくことができます。
未来への視点『仕事力をさらに高める』
塗装職人にとって、ダメ出しは避けられない現実です。
しかし、そこから逃げずに「哲学」と「戦略」で受け止めることができれば、あなたの仕事は格段に強くなります。
そして、この考え方を共有する仲間がいれば、さらに心は軽くなります。
あなた一人ではなく、全国で同じ志を持つ職人たちと「より良い仕組み」を学び合う。
その輪の中に入ることで、経営の不安も減り、未来の展望が開けていくのです。
第二の心得・元請けに施工後、値段を決められるときに‥
「施工が終わってから発注金額が決まるから」
要するには、人工を数えられて、現場ギリギリで発注されるということ。
笑顔で「はい、分かりました」とは言ったものの、足元を見るような発注の仕方に、人間的不信感を感じ、その現場をやり続けるのが精神的苦痛。
「自分の技術や努力は、世間一般水準での日数だけで計れるのか」と。
納得がいかないのに、受けなければ仕事が途切れるかもしれない。
そんな板挟みの経験を、あなたもきっと何度も味わったことでしょう。
安く買い叩かれても、あなたの腕の価値は下がらない
覚えておいてください。
「安く買われても、あなたの腕の価値は下がらない」 ということを。
たとえ目先の契約金額が削られても、あなたが誠実に仕上げた仕事は必ず残ります。
人は金額ではなく「仕上がり」と「安心感」を覚えているのです。
仏教の言葉に「値(あたい)は定まらず、徳は永遠に残る」とあります。
お金の評価は一時的でも、職人としての徳(信頼と誠実さ)は一生残り続けるのです。
3つの経営改善
もちろん、理想だけでは生活は守れません。
経営の視点からは、以下の工夫が必要です。
- 自社の料金基準表を作成する
「都度見積り」と「自社の料金表が無いこと」が、元請けやお客様に振り回される原因です。曖昧な感覚経営から明確な基準を持つことで、良い現場・厳しい現場も正しく判断できるようになります。 - 比較されない付加価値をつくる
施工写真報告・施工後保証を実施することも施工パッケージにして、「同じ土俵」での価格競争を避けることも実施しましょう。また、直販のお客様にも調査報告書を作成しましょう。 - 元請け依存からの脱却
直販比率を少しずつ増やし、自社の顧客を持つこと。
これが「値下げ圧力に屈しない会社」になる唯一の道です。
未来への視点『悔しさを成長の原動力にする』
元請けからの値下げ要求に耐えてきたあなたへ。
その経験は、決して無駄ではありません。
「自分の技術は、もっと正当に評価されてよい」
その悔しさが、成長の原動力となるのです。
そして、全国の仲間と一緒に「選ばれる仕組み」を共有していけば、
値段を下げずとも、むしろ「この会社に頼みたい」と言われる未来が開けます。
あなたの価値は、元請けの一言で決まるものではありません。
第三の心得・相見積もりに振り回されたときに‥
お客様からのひと言―
「実は他の会社からも見積を取っているのですが…」
その瞬間、胸の奥にざらつく感覚が走ります。
同じ工事内容なのに、安い会社があれば比べられる。
「じゃあ、もう少し値段を下げてもらえますか?」
そう言われれば、断りづらい‥。
誠実に積算した金額なのに、単なる数字の競争に巻き込まれる。
努力やこだわりが「値段」だけで切り捨てられる悔しさ‥
あなたも、何度も経験してきたのではないでしょうか。
お客様は「慎重に選びたい」から
相見積もりは、あなたを否定するものではありません。
それは、お客様が「慎重に選びたい」という自然な行動にすぎないのです。
人は「価格」で迷いますが、「信頼」で決めます。
だからこそ、真の競争相手は「他社の金額」ではなく、
「お客様の心にどう残るか」 なのです。
禅の教えに「色即是空(しきそくぜくう)」があります。
形あるもの(=価格や数字)は移ろいやすく、本質ではない。
本当に残るのは「心の安心」「信頼の温もり」――
それを提供できるかどうかが、職人の価値なのです。
3つの経営改善
では、どうすれば相見積もりに振り回されずにすむのか。
経営の観点からは、次の3つが鍵となります。
- 見積書は「提案書」にする
ただの数字ではなく、診断結果・工事の理由・保証内容を添えて提出しましょう。
「この会社は本気で考えてくれている」と思わせることが重要だからです。 - 比較されない強みを持つ
自社職人施工、地元密着、保証制度、アフターサービス
他社にはない「選ばれる理由」を、常に示せるようにしておくようにしましょう。 - 価格交渉に一線を引く
「品質を守るために、これ以上は下げられません」と伝える勇気を持つ努力をしましょう
その毅然とした姿勢こそが、お客様の信頼を引き寄せます。
ただし、同時に適正価格での受注を心がけることも重要です。
未来への視点『選ばれる仕組みづくりへの情熱を持つ』
相見積もりに悩むのは、あなただけではありません。
全国の職人たちが、同じように苦しみ、同じ壁にぶつかっています。
けれども、相見積もりの中で選ばれる工事店は存在します。
それは「価格」ではなく「信頼」で勝負している会社です。
もしあなたが、そうした会社の仲間と学び合い、仕組みを共有できたら――
「安いから」ではなく「あなたに頼みたいから」と言われる未来が、必ず開けます。
値段で生きるのではなく、信頼で生きる。
それが、職人経営の本当の戦い方なのです。
つづき
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