なぜ、腕の良い塗装店ほど集客に苦しむのか?
腕があるのに選ばれない。まじめに施工しているのに問い合わせが増えない。そこには、職人直営店ならではの共通した理由があります。
腕が良いのに、なぜ仕事が増えないのか
塗装業界には、まじめで、腕の良い職人社長がたくさんいます。
手抜きをしない。下地処理も丁寧に行う。お客様の家を自分の家のように考えて施工する。現場では誠実に仕事をしている。
それなのに、なぜか集客に苦しんでいる塗装店があります。
一方で、施工品質が特別に高いわけではなくても、広告や営業が上手な会社に仕事が集まってしまうこともあります。
これは、とても悔しいことです。
しかし、ここで大切なのは、「腕が良いのに報われない」と嘆くだけで終わらせないことです。
腕の良い塗装店ほど集客に苦しむ理由には、いくつかの共通点があります。
理由1 良い仕事をしていれば、いつか伝わると思っている
職人社長の多くは、仕事で信頼を得てきました。
余計なことを言わなくても、現場を見れば分かる。仕上がりを見れば、職人の腕は伝わる。お客様に喜んでもらえれば、また紹介が来る。
この考え方は、決して間違いではありません。むしろ、職人としては正しい姿勢です。
しかし、今の時代は、それだけではお客様に届きにくくなっています。
なぜなら、お客様は工事を依頼する前に、インターネットで調べ、複数社を比較し、口コミを見て、施工事例を見て、問い合わせ先を選ぶからです。
理由2 お客様は、塗装の良し悪しを見抜けない
塗装職人から見れば、良い工事と悪い工事の違いは分かります。
下地処理が丁寧か。養生がきれいか。塗料の希釈が適切か。乾燥時間を守っているか。細部まで手が入っているか。
しかし、一般のお客様には、その違いがほとんど分かりません。
外壁塗装は、完成直後だけを見ると、どの会社の工事もきれいに見えます。本当の差が出るのは、数年後です。
だからこそ、お客様は施工品質だけでは判断できず、見積金額、営業担当の説明、ホームページの印象、口コミ、会社の雰囲気などで判断します。
職人社長は、「ちゃんとやれば分かってもらえる」と思いがちです。
しかし、お客様は、「ちゃんとやってくれる会社なのかどうかを、事前に知りたい」と思っています。
つまり、必要なのは自慢ではありません。職人として大切にしていることを、素人のお客様にも分かる言葉で伝えることです。
理由3 営業が苦手で、価格の話になりやすい
腕の良い職人社長ほど、営業が苦手なことがあります。
自分を大きく見せるのが苦手。必要以上に売り込むのが嫌い。お客様をあおるような営業はしたくない。他社の悪口を言って仕事を取るのも好きではない。
これは、とても健全な感覚です。
職人の会としても、無理な営業や、過剰なあおり営業をおすすめすることはありません。
ただし、営業をしないことと、伝える努力をしないことは違います。
お客様は、塗装工事に不安を持っています。
- この見積りは妥当なのか
- この塗料で本当に大丈夫なのか
- この会社に任せて後悔しないか
- 追加費用は出ないか
- 職人さんはきちんと来てくれるのか
そうした不安に対して、職人社長が丁寧に説明しなければ、お客様は結局、分かりやすい価格で判断してしまいます。
すると、相見積もりになり、安い会社が有利になります。
腕の良い塗装店ほど、価格ではなく信頼で選ばれるべきです。
そのためには、営業トークを覚えるというよりも、自社の考え方、施工方針、仕事への姿勢を、きちんと言葉にすることが必要です。
理由4 紹介に頼りすぎて、集客の仕組みを持っていない
昔ながらの塗装店は、紹介で仕事が回ってきました。
親戚、知人、近所、OBのお客様、工務店、元請け会社。
もちろん、紹介はとても大切です。紹介が来るということは、良い仕事をしてきた証でもあります。
しかし、紹介だけに頼る経営には限界があります。
- 紹介が途切れると、急に仕事が薄くなる
- 元請けの都合で仕事量が変わる
- 単価を自分で決めにくい
- 下請け中心になると、自社の名前が地域に残りにくい
この状態が長く続くと、どれだけ腕があっても、経営が不安定になります。
職人直営店がこれからの時代に必要なのは、紹介を大切にしながらも、自社で見込み客と出会う仕組みを持つことです。
ホームページ、施工事例、ブログ、Googleマップ、口コミ、LINE、ニュースレター、地域活動。
こうしたものは、派手な広告ではありません。
地域のお客様に、「この会社はちゃんとしていそうだ」「この職人さんなら相談しやすそうだ」「地元で長くやっているなら安心だ」と思ってもらうための信頼の蓄積です。
理由5 職人としての価値を、経営の価値に変えられていない
腕の良い職人社長には、多くの価値があります。
- 現場を知っている
- 塗料を知っている
- 下地を見抜ける
- 雨漏りや劣化の原因を考えられる
- お客様の不安に現場目線で答えられる
- 手抜き工事を見抜ける
これは、大手リフォーム会社や営業会社には真似しにくい強みです。
しかし、その強みが言語化されていなければ、お客様には伝わりません。
たとえば、「うちは丁寧にやっています」だけでは弱いのです。
塗装は、上塗りよりも下地処理で寿命が変わります。だから当店では、見えなくなる部分ほど手を抜かず、劣化状況に合わせて下地から整えます。
このように伝えた方が、お客様には分かりやすくなります。
職人として当たり前にやっていることを、お客様にとっての安心に変換する。
これが、職人直営店のマーケティングです。
集客とは、派手に売り込むことではない
集客という言葉を聞くと、広告、チラシ、SNS、SEO、反響数などを思い浮かべる方も多いと思います。
もちろん、それらも大切です。
しかし、職人の会が考える集客は、単なる反響獲得ではありません。
本来の集客とは、自社に合うお客様と出会うことです。
どんなお客様でもいいから集める。とにかく数を増やす。安さで引き寄せる。強い言葉で不安をあおる。
そうした集客は、一時的に問い合わせが増えたとしても、職人直営店の健全経営にはつながりにくいと考えています。
大切なのは、「この会社の考え方に共感した」「この職人さんに見てもらいたい」「安さだけでなく、きちんとした工事をしてほしい」というお客様と出会うことです。
腕の良い塗装店が、まず取り組むべきこと
では、腕の良い塗装店は何から始めればよいのでしょうか。
最初から大きな広告費をかける必要はありません。
1. 施工事例を丁寧に残す
ただ「外壁塗装をしました」ではなく、どんな劣化があったのか、どんな下地処理をしたのか、なぜその塗料を選んだのか、お客様は何に悩んでいたのか、職人としてどこを大切に施工したのかを残します。
施工事例は、単なる実績紹介ではありません。お客様に安心してもらうための証拠です。
2. 職人社長の考え方を発信する
お客様は、会社だけでなく、人を見ています。
どんな社長なのか。どんな思いで仕事をしているのか。なぜ塗装業を続けているのか。どんな工事はしたくないのか。お客様に何を大切にしてほしいのか。
こうした考え方は、価格では比較できない価値になります。
3. 相見積もり前に信頼をつくる
見積書を出した時点で初めて勝負するのでは遅い場合があります。
お客様は問い合わせ前から比較しています。
ホームページを見た時点で「ここは信頼できそう」と思ってもらえるか。施工事例を読んだ時点で「ちゃんと見てくれそう」と思ってもらえるか。
ここが重要です。
4. 自社に合うお客様を明確にする
全員に選ばれようとすると、結局、価格勝負になりやすくなります。
大切なのは、「どんなお客様のための塗装店なのか」を明確にすることです。
- 安さだけでなく、長持ちする工事を求める方
- 地元の職人に直接相談したい方
- 家族が安心して暮らせる住まいを守りたい方
- 施工内容をきちんと説明してほしい方
- 工事後も長く付き合える会社を探している方
こうしたお客様に向けて発信することで、問い合わせの質も変わっていきます。
職人直営店には、これからの時代に必要な価値がある
これからの時代、塗装店経営は決して簡単ではありません。
人口減少。人手不足。材料費の高騰。広告費の上昇。相見積もりの増加。大手リフォーム会社やフランチャイズとの競争。
しかし、その中でも職人直営店には大きな可能性があります。
なぜなら、地域のお客様は本当は、「誰が来るか分からない会社」よりも、「顔の見える地元の職人さん」に相談したいと思っているからです。
ただし、その存在が見えていなければ選ばれません。
良い仕事をしているだけでは、届かない。しかし、良い仕事をしている会社が、正しく伝えることを始めれば、地域のお客様に選ばれる可能性は大きく広がります。
まとめ 腕の良さを、伝わる形に変える
腕の良い塗装店ほど集客に苦しむ理由は、腕が足りないからではありません。
むしろ、腕があるからこそ、「分かる人には分かる」「現場を見れば伝わる」と思ってしまうのです。
しかし、今の時代に必要なのは、腕の良さを否定することではありません。
腕の良さを、伝わる形に変えることです。
施工品質を、言葉にする。現場のこだわりを、施工事例にする。社長の思いを、ホームページに載せる。お客様への姿勢を、ブログで伝える。安さではなく、信頼で選ばれる理由をつくる。
それが、職人の会が考える、職人直営店の経営です。
売上だけを追いかけるのではなく、地域のお客様から信頼され、職人が誇りを持ち、長く続いていく塗装店をつくる。
その第一歩は、「良い仕事をする」だけで終わらせず、良い仕事が伝わる経営に変えていくことなのです。
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