営業力を磨く前に、仕事力を磨いたほうがよい理由

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発行・運営
日本建築塗装職人の会

小さな会社の経営

営業力を磨く前に、仕事力を磨いたほうがよい理由

経営がうまくいかなくなると、人は「今の自分にない力」を探し始めます。

集客力が足りないのではないか。
営業力を身につけるべきではないか。
もっとSNSを活用すべきではないか。
これからはAIを使えなければ生き残れないのではないか。

もちろん、どれも大切な力です。

しかし、小さな会社の経営を長く見ていると、少し気になることがあります。

新しい力を身につけようとする前に、今いただいている仕事を、きちんとやり切る力が不足している会社が意外に多いのです。

私はこれを、単なる技術力ではなく「仕事力」と呼びたいと思います。

仕事力とは、上手に施工することだけではない

職人にとって、技術は仕事の土台です。

塗装店であれば、下地を正しく見極め、必要な処理を行い、塗料の性能を十分に発揮させる。リフォーム店であれば、目に見える部分だけでなく、建物の状態と、お客様の暮らしまで考えて工事をする。

これは当然、欠かすことができません。

ただし、お客様が見ているのは、完成した工事だけではありません。

問い合わせへの返事が早いか。
約束した時間を守るか。
分からないことを、分かる言葉で説明してくれるか。
現場をきれいに保っているか。
工事が終わったあとも相談に乗ってくれるか。

お客様は、工事の前から工事のあとまで、その会社の「仕事の仕方」を見ています。

つまり仕事力とは、技術力だけではありません。

約束を守る力。
相手を安心させる力。
問題から逃げない力。
仲間と協力する力。
最後まで責任を持つ力。

これらを含めた総合的な力が、仕事力なのです。

集客しても、仕事力がなければお客様は残らない

仕事が少なくなると、多くの会社は集客を強化しようとします。

広告を出し、ホームページをつくり直し、SNSを始める。問い合わせ件数を増やし、見積もりの機会を増やそうとします。

ところが、仕事力が整っていない状態で集客だけを増やすと、会社の問題まで拡大します。

返事が遅れる。
見積もりが雑になる。
現場の段取りが崩れる。
社員が疲弊する。
説明不足からクレームが生まれる。
工事後の対応まで手が回らなくなる。

広告は、会社を良い会社に変えてくれるものではありません。

今ある会社の姿を、より多くの人に伝えるものです。

仕事力の高い会社が広告を使えば、評判が広がります。しかし、仕事力が整っていない会社が広告を使えば、不満や悪評まで広がってしまいます。

だからこそ、より多く集める前に、集まってくださった一人のお客様を、きちんと喜ばせられる会社にならなければなりません。

お客様は、特別なことより「当たり前」を覚えている

経営者は、他社にはない特別な商品やサービスをつくろうとします。

しかし、お客様が会社を評価する理由は、必ずしも特別なものばかりではありません。

「連絡したら、すぐに返事をくれた」
「職人さんが毎朝きちんと挨拶してくれた」
「今日どこまで進んだのか説明してくれた」
「頼んでいない小さなところにも気づいてくれた」
「工事が終わったあとも顔を出してくれた」

このような、一見すると当たり前のことが、お客様の記憶に残ります。

そして、その記憶が次の相談や紹介につながります。

特別なことを一度するより、当たり前のことを毎回きちんと行うほうが難しいものです。

だからこそ、それを続けられる会社は強いのです。

仕事力の高い会社には、五つの共通点がある

仕事力の高い会社には、次の五つの共通点があります。

一.返事が早い

すぐに答えが出せない場合でも、「確認していつまでにご連絡します」と伝えます。

返事の早さは、能力の高さというより、相手を不安にさせない姿勢の表れです。

二.約束を守る

時間、金額、工期、施工内容。

小さな約束を守る会社が、大きな仕事を任せてもらえる会社になります。

もし守れない事情が生じたら、分かった時点で説明し、相手と相談します。

三.分かる言葉で説明する

専門用語を並べることが、専門家なのではありません。

お客様が理解し、納得して判断できるように説明することが、専門家の責任です。

四.現場を整える

道具、車両、服装、養生、清掃。

現場の整い方には、その会社の日頃の考え方が表れます。完成後には隠れてしまう部分にも、仕事に対する姿勢は現れます。

五.最後まで責任を持つ

問題が起きたときに、原因を他人へ押しつけない。

自社に都合の悪いことも正直に説明し、必要な対応を行う。

この姿勢が、会社の信用をつくります。

AIも広告も、仕事力を拡大する道具である

これからの経営に、AIやデジタル化は必要です。

問い合わせ対応、見積作成、顧客管理、施工報告、情報発信。小さな会社ほど、新しい道具を活用して、生産性を高める必要があります。

ただし、AIが約束を守ってくれるわけではありません。
広告が現場をきれいにしてくれるわけでもありません。
システムがお客様への思いやりを生んでくれるわけでもありません。

道具は、使う人と会社の姿勢を拡大します。

誠実な会社が使えば、より多くのお客様へ誠実さを届けられます。一方で、土台が整っていない会社が使えば、混乱を早めることにもなります。

新しい力を否定する必要はありません。

しかし、その前に確認すべきことがあります。

今いるお客様へ、きちんと返事ができているか。
目の前の現場を、最後まで丁寧に仕上げているか。
社員や協力業者との約束を守っているか。
問題が起きたときに、逃げずに向き合っているか。

この土台があってこそ、新しい力が本当の力になります。

当たり前のことを、特別丁寧にできる会社へ

多くの会社は、他社と違うことを探します。

しかし、本当に強い会社は、奇抜なことをしている会社ではありません。

返事をする。
約束を守る。
分かるように説明する。
現場を整える。
最後まで責任を持つ。

誰もが大切だと知っていながら、忙しくなると疎かにしてしまうことを、毎日、丁寧に続けています。

特殊な力を身につける前に、まず仕事力を磨く。

新しい集客方法を探す前に、今のお客様を大切にする。

特別な会社を目指す前に、当たり前のことを特別丁寧にできる会社になる。

遠回りに見えますが、それが信用を積み重ね、紹介を生み、長く地域から選ばれ続ける会社への、最も確かな道なのだと思います。

発行人・日本建築塗装職人の会 会長
青木 忠史

地域で真面目に働く小さな会社や職人が、正当に評価され、次の世代へ残っていく社会をつくりたい。

工事店経営の支援に20年以上携わり、これまで700社を超える経営に向き合ってきました。経営、職人育成、建築業界、地域社会の現場で見えてきたことを、親方社長へ向けて発信します。

経営指導20年以上支援実績700社超『百年企業の作り方』著者社会文化功労賞
LEARN AND ACT
気づいた親方から、
会社は変わる。

読んで終わりではなく、自社の経営で一つずつ実践する。地域に選ばれ、次の世代へ残る会社づくりを、さらに深く学べます。

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