現役経営コンサルタントが業績改善を行なう時に使うチェックリスト48

青木忠史

青木忠史
(記事一覧はこちら)

■日本建築塗装職人の会 会長 / アサヒリフォーム有限会社2代目代表取締役(現名誉会長)/ 経営改善実績700社以上・相談実績7,000件以上 / 『職人の会式 塗装店経営法』開発/ 『繁盛親方-工事店DXアプリ開発 / 「いちばんやさしい工事店経営の教科書」(ダイヤモンド社)/「日本建築塗装職人の会 成功の秘密」「塗装職人」「のび太くん採用」(サンライズパブリッシング社)他

7773件

この数字、なんだかわかりますか?

実はこれ、毎年倒産していく企業数の推移です。(引用元:東京商工リサーチ)

 その上で、この1年間は、コロナによってビジネスのあり方が大きく変わりました。

 このような時代背景から、「DX推進を進めて時代の変化に乗らなければ」や 「MAを導入して自社のマーケティングをよくしよう」という様に、デジタルトランスフォーメーションに精を出す中小企業も少なくありません。ところが、これはあくまで私の個人的な印象ですが、中小企業では、業績改善のために急いでDXを進めたり、MAを導入しても、実際にそれらを有効活用できたり、うまく運用して業績改善に繋げている企業はほとんど無いと感じます。

 私はこれまで15年以上に渡って、中小企業に特化した経営コンサルタントに従事してきて、累計700社を超える企業の ”経営危機”と”業績改善”の一部始終を間近でみてきました。

 その様な中で、企業が短期・長期、両方の側面で持続的な利益を出し、業績改善をするには、”本質的な”企業の内部改善が非常に重要だと、年々本当に強く感じているからです。

 日々の経営コンサルティングをする中で、業績を見事にV字回復させる企業には共通点があります。それは、”外部要因”ではなく、しっかりと”内部要因”に徹底的に向き合い、愚直に改善アクションを行える企業だということです。

本当に細かいボトルネックの改善を積み重ね続け、自社の市場における本当の優位性に気づく企業は本当に強くなります。

 そこで本日は、これまで700社以上の中小企業をコンサルタントをしてきた私が実際に業績改善に着手する際の本質的な改善チェックポイントのみを精査して48個にまとめ、それらをチェックリストとして活用できるようにしました。

 中には「こんなこと当たり前じゃん」「何を今更」と思われる内容もきっとあるはずです。 ただそれでも多くの企業再生を間近でみてきた私が、本当に重要だなと心から感じるものをチェックリストにいれたので、改めて真剣に向き合ってみていただけましたら幸いです。

 細かいテクニックやマーケティングのフレームワークを期待されている方にはあまり合わない記事かもしれません。

ただ、

・中小企業の経営者や部長
・マーケティングの仕事に携わる方
・フリーランスで仕事をされている方
・あらゆる職種のコンサルタントの方

 など、どの人にも本質的には役立つ業務改善の切り口をまとめているので、きっと自社のビジネスのあり方を考え直すきっかけになったり、業務改善のヒントに生かせるものはあると思います。ぜひこの記事を参考に1つでも業績改善のアクションに繋げてみて成果を出していただければ幸いです。

 また今から紹介する全48の項目をPDFでもご用意したので、記事の内容を見ながら活用していただけると幸いです。

(経営コンサルタントが活用する業績改善チェックリスト48 Word)
(経営コンサルタントが活用する業績改善チェックリスト48 PDF)

簡易版・経営計画書 Word)
簡易版・経営計画書 PDF)


この記事の目次

0.「経営の全体像」の理解と「業績改善」のメカニズム

 まず業績を改善していくためには、経営の全体像を理解していただくことから始めます。中小企業においても、経営の全体像は以下の図のようになっています。

そして、業績を改善する大きな流れは、以下の3ステップです。

①現状を把握する

 まず、会社のどの分野に、どのような課題があるのか、自社の経営の現状を把握します。まず、以下に紹介している項目を一通り目を通しながら、自社の経営を見つめ直していきましょう。

②具体的な目標を掲げる

 現状把握が出来たら、次は業績改善目標を具体的に掲げます。いつまでに・どのような状態になりたいか?を、具体的数値化をして明確にしていきましょう。

 ③計画を立てる

 最後に計画を立てていきます。実は、現状把握が正確に出来ており、かつ明確な目標が見つかっていれさえすれば、計画を立てることはそれほど難しいことではありません。むしろ「計画を立てることが苦手…」という方は、現状把握が正しく出来ていなかったり、目標設定が間違っていたりすることがほとんどですので、上記①②を見直しながら、計画を立ててみましょう。

 それでは、順番に見ていきましょう。


1.経営戦略

 はじめは、一番大枠の「経営戦略」から見直しをしていきます。経営戦略とは企業が所有する「人」「モノ」「金」「知識」などの経営資源をどのように活用していくのかという大枠の「戦略」を指しています。

 「経営戦略」の見直しが必要な理由は以下の2点です。

 ①情報社会になり昔と比べて時代の変化が格段に早くなっていることから、新商品・新サービスを開発しても成果を挙げられる時間が短くなっているため
 ②同じく情報社会になり昔のように「良好な人間関係」だけでビジネスが継続するということが難しなってきているため

 これらのことから、全ての企業が「自社の強み」を中心にした経営に強くシフトしていかなければならなくなってきているからであります。具体的には、以下の項目を順番に確認をしてみてください。

1-1.広げすぎている事業の撤退はできないか?

 経営戦略の見直しによる業績改善の1つ目の視点は、「広げすぎている事業の撤退はできないか?」です。

 広げすぎている事業を撤退させることは業績改善の主要な打ち手の1つです。事業が好調な時には、自社の失敗の要因は見えず、不況などと言われる逆風の時ほど、本当に自社がやるべきことが明確に見える時期であるので、不況になり業績が低迷した時期にこそ、「広げすぎている事業の撤退を潔く行うこと」をおすすめしています。

 広げすぎている事業には、以下の兆候が見られることが特徴としてあります。

広げすぎている事業に見られる代表的な兆候
①何年たっても収益が上がらず業績低迷状態が続いている
②上記の結果、人材が定着しない・責任者が育たない状況が長年続いている
③他人(周りの人)からも(その事業を辞めて)「本業だけで勝負したら…」等と言われることが多い

 上記のような兆候が見られる事業からの撤退を行うことにより、経営全体がシャープになり、社員への経営ビジョンの浸透も再び進み、仕事へのモチベーションアップが戻り、組織にも好影響を与えて、経営・事業が伸びていくということが起きます。

1-2.「経営者の強み」に基づいた事業に「再構築」してみることはできないか?

 経営戦略の見直しによる業績改善の2つ目の視点は、「経営者の強み」に基づいた事業に再構築してみることはできないかという視点です。

 経営者の強みに基づいていない事業の特徴とは以下のとおりです。 

経営者の強みに基づいていない事業の特徴
①経営者自身がその分野の専門知識を有していない(これまでその専門知識を蓄積する努力を怠ってきた)
②収益が上がっておらず、何度も撤退をしようかと考えたことがある
③収益が上がっていたとしても、経営者自身その事業に対する「情熱」が無く、これまでも何度も撤退(譲渡売却)を考えたことがある

 また、中小企業における「経営戦略の再構築」とは、具体的には以下を指しています。

 ①事業を「手放す」・・・・・・・・・撤退・譲渡売却をする
 ②事業の「運営方法」を見直す・・・・管理者経験者を採用し事業を任せ、部門別経営を行う
 ③事業に必要な「専門知識」を得る・・本事業を行っていくことを前提とするなら、事業に必要な専門知識を得る目標を立てる
 ④事業に対する「動機」を見直す・・・その事業から経営者自身と自社にどのようなノウハウを蓄積するのかを改めて考え直し明文化する

 そもそも中小企業の場合、経営者の「情熱」が事業の成長に大きく直結する側面が大きいです。そのため収益が上がっていたとしても「経営者の強み」で行っていない事業に対しては、「情熱」が持てず、環境の変化などに対する対応などもおざなりになったり、また先々の不安が生じたりしてしまうこともあります。そして、その姿勢が社員にも悪影響を与えないとも限りません。

 ですので、経営者自身の強みで行っていない事業であるならば上記の①②③④を検討してみてください。

 また、以前までは「強み」であったものが、今は「弱み」になってしまっている部分もあったりします。ですので、「経営者の強み」に基づく経営戦略の再構築は、一定期間ごとに行うことが大切です。

 これにより、経営がシャープになり、業績が向上していく可能性があります。

1-3.自社を「専門分野」に特化させ、「圧倒的な強み」を作ることはできないか?

  経営戦略による業績改善の3つ目の視点は、「圧倒的な強みを持つ・練ること」ができないかです。

 今の時代に敗れていく中小企業の大半は「専門特化」が出来ないこと。そして、その理由は私が見る限り以下の2つです。

 ①創業当時にはそれでもうまくいった経験(過去の成功体験)等があるから
 ②「専門特化」をさせなければいけないことは薄々分かっていても「今でさえお客様が少ないのに、『専門特化』させるとさらにお客様が少なくなってしまうのではないか…」と逆に不安になってしまうから

 ①についての対策は、「過去の自社を今の自社が超えることを目標にすること」以外ありません。②についての対策は、まず「専門特化」させることで、その分野(商品・サービス)に特化した経験・ノウハウを蓄積することを目標とします。そしてその次には、「(特化して圧倒的に強くなった)商品・サービス」を求めてくれるお客様をマーケティング目線で見直し、新しいマーケットを見つけることをします。

 上記の2つを行うことで、新しいマーケットが見え、業績向上の道が見えるというわけです。

1-4.「屋号や商品名」を変えてみることはできないか?

 経営戦略からの業績改善の4つ目の視点は「屋号や商品名」を変えてみることはできないかです。

 その理由は単純明白。競争社会の中でお客様に印象を与えて、覚えてもらうことが優位性を発揮できるというのはマーケティング上の原理原則でもあり、さらに今はネット検索の時代となり、屋号(会社名)・商品名・サービス名もSEO的な影響を受けるので、分かりやすい・検索されやすい名前のほうが競争優位に立つことができるからです。

 現に、私のクライアント様では、会社名を変えただけで、売上が2倍になったというケースもあります。また、以下は一般企業の商品名や屋号などを変えることによって売上UPを実現した有名な一例です。

名前を変えて業績UPの事例

 など。もちろんネーミングだけではなく様々な戦略の上に、業績改善は成り立っているかとは思いますが、ネーミングを変えて業績が向上した有名な事例です。

 地域密着の中小企業の中にも「よい商品」や「良いサービス」を持った会社様はたくさんあります。しかし、分かりにくい商品名や分かりにくい屋号のため、売れ行きがよくないケースもたくさんあると感じていますので、ぜひ「商品名」「屋号」を変えてみるという「経営戦略」も検討してみてください。

 広告効果が格段に向上し、業績向上に大きな影響を与える可能性があります。

1-5.元請企業様に対してサービス提供できないか?

  経営戦略からの業績改善の5つ目の視点は「自社サービスを元請企業様に提供できないか?」です。

 私がよく接している建築業界では、消費者直販事業をしながら元請建設業者様からのお仕事を貰うということはごく当たり前に行われていることです。しかし、他の業界では全くそのようなことは行われていない状況も多々、お見受けします。

 そこで、建築業界が直販事業と元請企業様の仕事を行う「経営スタイル」を行っているように、他の業界でも取り入れていくことができれば、今の自社サービスだけでも、もっと売上を上げることは容易に想像ができます。

 *ただし、その時に「元請企業様のお客様と直接取引を行う中抜き行為」はご法度となりますので、商道徳を守って行う姿勢も大切ですが。

1-6.コンサルティング展開ができないか?

 経営戦略からの業績向上の6つ目の視点は「コンサルティング展開ができないか?」です。

 自社で有している経営上のノウハウを同業他社に教えるコンサルティング展開は、健全経営を行っている企業であればもっとも早い業績向上の道の1つです。

 具体的には以下のポイントでコンサルティング展開が可能です。

コンサルティング展開が可能な分野
①売上UPに関わる集客コンサルティング・営業コンサルティング
②商品サービス開発コンサルティング
③人材採用や人事マネジメントコンサルティング

 自社の「強み」がどの分野にあるかをよく見極めた上で事業展開を試みることが大切ですね。

 ただ、自社のノウハウを競合他社に教えることに対して、「真似されて、うちの業績が上がらなくなってしまったらどうしよう・・・」などと、不安を感じることもあるかもしれません。

 しかし、結論を言うと、大丈夫です。確かに、コンサルティングを提供することを通して、自社のメソッドは伝わりますが、会社経営の根底を支えている「企業哲学的な部分」を真似することは不可能であるからですし、コンサルを受けた会社は、そのコンサルティングを通して自社の強みを開花させていくので、あなたの会社とは、全く違う会社に成長をされていくことがほとんどだからです。

 反面、競合他社の経営者様は、実際に同じ業界でうまく経営を行っている「ノウハウ」を知りたいという欲求が強くあることからも、自社のノウハウをコンサルティング展開をするという事業は、ヒットする確率がとても高いのも特長です。

 またこのようなコンサルティング展開は、IT系の企業のみならず、今のような情報社会では、工務店や飲食店などの地域密着型企業も考えていくことで事業拡大のチャンスを見出すことができるはずです。

1-7.バックエンドサービスをトコトン作れないか?

 経営戦略から7つ目の業績改善の視点は「バックエンドサービスをトコトン作れないか?」です。

 バックエンドサービスをトコトン作ることが大切な理由は以下の4点です。

 ①ビジネスでは、新規客を探す費用が高いため
 ②一度信頼を得たお客様のさらなるニーズに応えていくことが売上UPの近道であるため
 ③バックエンドサービスの中から次の「メイン商品(メインサービス)」も誕生してくる可能性があるため
 ④バックエンドサービスを作り続けることで「自社の強み」がより明確になり新規客開拓にも好影響を与えるため

 ここで挙げられる例かどうかは分かりませんが、日本を代表する「日用品」メーカーTOPの「花王」様は、年商1兆3,820億円(2020年12月期)であり、数えきれないほどの自社ブランド・自社商品を有しております。参考までに、自社商品を開発する研究開発費用の年度予算は約585億円(売上比4.2%:参照:https://www.kao.com/jp/who-we-are/data/)となっており、花王ブランドの商品の良さを体感したお客様は、日用品の別の分野においても、無意識で花王商品を購入するようになっており、1人ひとりの生活に商品を通して密着し続けていると考えられます。

 我々のような中小企業経営者も、目指す企業の姿は「花王」様のように、クライアント様に対して自社商品・サービスを通して密着をすること、そのためにもバックエンドサービスをトコトン作り続けることではないでしょうか。

 以上が、「経営戦略」からの代表的な見直しです。


2.マーケティング戦略

 次には、「マーケティング戦略」も見直していきます。

 マーケティング戦略とは、言うまでもなく、市場・顧客・自社・自社サービスを把握した上で、自社の商品サービスをどのような顧客へどのようにアプローチさせていくかという一連の構想です。

 主に、企業規模によって取るべく戦略が変わるものですが、ここで提唱するのは、私が地域密着型業界の中小企業経営コンサルタントであるため、地域密着企業の中小企業寄りの「マーケティング戦略」になります。が、地域密着型企業が取り組んでいるものは、いわゆる昔ながらの「商売」という「原理原則」でもあるので、地域密着型企業以外にも多いに参考になるのではないかと思います。

2-1.メイン商品を「今すぐ客」だけに売ることを考え、マーケティングステップを再設計できないか?

 マーケティング戦略からの業績改善の1つ目の視点は「メイン商品を今すぐ客だけに売ることを考え、マーケティングステップを再設計できないか?」です。

 なぜなら、業績が低迷している中小企業で多いケースでは「今の時代は、WEBマーケティングをしなければ商売が成り立たない」等と先に考えてしまい、それ自体が「固定概念」となり、「今すぐ客」へのアプローチが考えられていないことがよくあるというケースです。

 その結果、傍から見ると、マーケティングステップがズレてしまっており、業績が低迷しているというシンプルなケースが非常に多いことが特徴です。

 ここで改めて説明しますと、「今すぐ客」とは、一般的に言われている、ニーズが高くウォンツも高い状態にある、まさに「今すぐ」その商品を必要としている状態にあるお客様を指しています。

 そして、根本的に業績が低迷している中小企業ではまず、いろいろなことに手を出すことを辞め、以下の1本のマーケティングステップを設計することから始めましょう。

「今すぐ客だけの見込客獲得」

「見込客育成」

「契約」

 その上で、リフォームや塾、建築業種などの労働集約型のビジネスの場合においては、マーケティングよりも実際のスタッフの対応やサービス内容で判断される割合も大きくなるので、同時に人材採用と教育にも力を入れる必要があるでしょう。

 ただし、すぐに人材採用・教育はできないので、逆に、自社の等身大の実力に合わせた広告設計のほうが重要になります。

 このように考えて、「今すぐ客」を設定し、その今すぐ客の心理から逆算したマーケティングステップを設計することで、地域密着型企業においても業績向上に繋がるでしょう。

2-2.リストを収集してダイレクトマーケティングをかけてみることはできないか?

 マーケティング戦略からの業績改善の2つ目の視点は、「企業リストを収集してダイレクトマーケティングをかけてみることはできないか?」です。

 ここでは主に、BtoBマーケティングがテーマになりますが、地域密着企業でもBtoBビジネスも多くあります。そのような場合、インターネットを経由したリードの獲得のみならず、対象顧客層の企業リストを手作業等で収集し、そのリストに対して、メールDM・DM・FAXDM等を送るというマーケティング手法を実行してみることを指しています。

 業種によりけりではありますが、アパート・マンションオーナー様等を対象にしたリフォーム等の案内や地域密着型ビジネス・建築・建設業界の高額商品・見積等を必要とする業種などでは競合他社の多くが行っていないと考えられるので有効でしょう。

 実施方法ですが、まず、企業リストを、検索、業者からの購入などなんらかの方法で収集し選定していきます。そして「ターゲット」(ペルソナ)に近いリストだけに絞り込むオファー等を送り、アプローチを重ねていきます。古典的な方法のようにも見えますが、多くの競合他社がインターネットだけで完結させることを考えている環境下においては「逆転の発想」「ブルーオーシャン戦略」となり、アプローチしやすく、また競合にも見抜かれにくいものとなります。

 ここでのポイントは競合他社がまだ実行していないオフラインでの顧客へのアプローチを実行するということにもなります。

2-3.顧客様から紹介促進を促すことはできないか?

 マーケティング戦略からの業績改善の3つ目の視点は、「顧客様からの紹介促進を促すことはできないか?」です。

 紹介促進を増やすためには、以下の4つの要素が求められます。

①競合他社を圧倒するサービスの設計…サービス内容と価格設定を調整し、価格に対してサービス内容が「感動」を与えるレベルに持っていくこと
②理念・ビジョン・価値観への共感…そのサービスを提供する理念・ビジョン・価値観に対して、お客様にも共感してもらうこと
③紹介に対する報酬(意味報酬と経済的報酬)を発生させること
④顧客様に紹介対象者像を明確に教えてあげ、その方に対してどのようなタイミングで、どのようなメッセージで紹介促進をするのかも教えてあげること

 このような紹介促進を考えることにより、自社サービスのブラッシュアップにも繋がってゆきますので、業績向上を実現できるということにもなります。

2-4.マスコミを活用することはできないか?

 マーケティング戦略からの業績改善の4つ目の視点は「マスコミを活用することはできないか?」です。

 マスコミを活用するメリットは、言わずともでしょうが、以下の2つです。

マスコミを活用する2つのメリット
①信頼の強化
②認知の拡大

 マスコミを活用する実施方法は以下の3ステップとなります。

 ①該当するメディア・コーナーを抽出する
 ②プレスリリースを書く
 ③FAX  or メールで「プレスリリース」を送る

 プレスリリースとはあくまで「ニュース」を送ることが重要となります。そこで、ニュースを作りやすい「視点」と「コンセプト」を以下に紹介しますので、参考にしてみてください。

1.ニュースという企画 ※代表的な一部です。

アンケート募集企画人物紹介記事提供
プレゼント統計結果記念日を絡めた企画企業活動報告

2.掲載されやすいコンセプト ※代表的な一部です。

社会性・公共性ボランティア性社会通念を超えた◯◯◯がんばる人物
面白いモノ学生・子供本・DVDの出版新しいもの
古いもの・懐かしいもの今のブームに便乗する日本人は自然が大好き*事件・事故

 例えば、ニュースの視点で「記念日を絡める企画」を選びます。掲載されやすいコンセプトでは「社会性」と「ボランティア性」を選ぶとします。そこで、「子供の日にプログラミングスクール◯◯◯が、小学生を対象にスクールを無料開放!」(企画趣旨:子どもたちが未来の日本の発展繁栄のために活躍してほしいという思いを込めて~)というような企画を作るイメージです。直接的な売上に直結しなくても、クチコミが発生する源となり、ブランドの形成となり、その結果、中期的に売上に影響を与えていきます。

2-5.集客用の小冊子を作成することはできないか?

 マーケティング戦略からの業績改善の4つ目の視点は、「あえて紙媒体での集客用の小冊子を作成できないか?」です。

 こちらも古典的にも感じますが、集客用の小冊子は多くの競合がデジタルマーケティングに移行している影響もあり、「ブルーオーシャン」ともなってきているからです。あくまでも私の経験より感じることですが、人間がデジタルデータと紙での情報を両方与えられた場合、手に取ることができる紙を大切に扱うという傾向があるとも考えられています。(参照:https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20130121/261272/)
 また、私自身も高額商品など意思決定に体系的な情報を必要とする場合には、紙媒体は有効であると考えているからです。そのように商材や顧客層によっては紙媒体もまだまだ有効であるからです。

 しかし、当然ながら「ユーザーファースト」を徹底することが重要であることは言うまでもありません。具体的に言うと「集客の小冊子」というのは、エンドユーザーにとって役に立つことや内容を冊子にまとめるイメージです。

 ポイントは、無料のありきたりのものではなく、有料で感謝されるレベルの情報を提供することです。ちなみに私が、地域密着型企業におすすめなのは、アナログ経営に対して圧倒的な実績のある、こちら「集客用小冊子入門塾」です。

(集客用小冊子塾のアート印刷様:https://artinsatsu.com/ WEBサイトより引用)

 デジタル化が進んだ今の時代、かえって情報疲れしているユーザー・企業などに当たっていると感じているそうです。よく言われている集客用小冊子の基本構成は以下のとおりです。

集客用小冊子の基本構成
  • 大前提として「ペルソナの設計」
  • そのサービスがあなたに必要である理由という啓発(問題提起とあぶり出し)
  • そのサービスのメソッド(解決方法の提示)
  • そのサービスを開発した代表者の動機や生い立ち等(人間関係の構築)

 むしろ、人知れず、アナログマーケティングに活路を見出す企業も増えていますので、やるなら今がチャンスです。


3.商品戦略

 次は、「商品戦略」(製品戦略)を見直していきます。「商品戦略」とはマーケティング戦略において、どのような顧客に対して、どのような商品・サービス(Product製品・Price価格)を、どのように提供するか(Place流通・Promotionプロモーション)の一連の構想を指しています。

商品戦略5ステップ
ステップ1:顧客に提供する「商品・サービス」の「価値」を考え、「商品・サービス」のコンセプトを設計する
ステップ2:どのように生産していくのかを設計する
ステップ3:どのようなパッケージにするのか設計する
ステップ4:どのように流通させていくのか(販売していくのか)設計する
ステップ5:どのようなサポートをするのか設計する

 ただし本コラムは、あくまでも企業の90%程度を占める年商3億円以下を対象とした中小企業に即効性のある経営コンサルティング的な提案をテーマとしていますので、「経営戦略的な知識」に深入りしすぎず、中小企業の現場で求められている具体的・実践的な目線での提案をさせていただくこととします。

3-1.パッケージデザインを変えてみることはできないか?

 商品戦略からの業績改善の1つ目の視点は「パッケージデザインを変えてみることはできないか?」です。

 なぜなら、業績が低迷する中小企業の多くには、デザインに力を入れていないということがあるからです。具体的には、「うちは良い商品を作っている」といういわゆる「生産」部分に比重を置いてはいるものの、パッケージに力を入れていないケースです。

 デザインが売上を変えるという例は、「デザイン 売上」で検索すると沢山の事例が出てきます。例えば、

 ・民宿レンタルサービスを展開する「Airbnb」では、物件の写真撮影を普通の人からプロに変えたところ、予約が2-3倍に伸びた!
 (参照:https://blog.btrax.com/jp/airbnb/)

(引用元:airbnb公式ホームページ*ページ画像はあくまで一事例として)

 ・明治「THE CHOCOLATE」はデザインを変えて目標売上の3倍になった!
 (参照:https://president.jp/articles/-/21623)

(引用元:明治公式ホームページ

 など、過去の事例も含めると多数の事例があるようですね。

しかし、必ずしもモノとしての「商品」を扱っているわけではない会社さんの場合は、名刺・会社案内・サービス案内・WEBサイトなどのデザイン戦略に取り組んでみることをおすすめしています。

 今の自社のデザインが、顧客に提供する「価値」を表現できるデザインなのかどうか、改めて、構想をし直してみませんか?

3-2.看板や店舗外装を新しくできないか?

 商品戦略からの業績改善の2つ目の視点は「看板や店舗外装を新しくできないか?」です。

(看板や店舗外装が、商品戦略だとは思わないのですが、このコラムの流れとして、「3-1.デザインを変えてみる」がありましたので、その次に記載することにしました)

 単純な話、「看板をきれいにする・デザイン化する」だけでもお客様には「しっかりとしたお店だ」というメッセージを伝えることができるからです。サービスの中身とは全く関係がなく、看板にはそのような力があるからです。特に、地域密着型の店舗の場合、看板と店舗外装のデザインは、これからの時代に生き残っていくためには必須事項になってくるでしょう。

 原理原則としては以下のとおりです。

地域密着型店舗の看板の原理原則
  • ラーメン屋ならラーメン屋ぽく、お客様の認知に合わせた看板が望ましい。(お客様のイメージに沿わない看板などを設置すると何屋さんか分かりにくくなり、集客に悪影響が出る可能性がある)
  • 男性がメインユーザーの場合、太くて大きな文字のほうがしっかりとしたお店に見え信頼を得やすく、細くて小さな文字にすると頼りなく感じる
  • 女性がメインユーザーの場合、ユーザーが求めているフィーリング・雰囲気を表現できている看板・外観が望ましい(美容院など)
  • 食料品・日用品などの場合、女性が買い物に行くとしても、生活に関わる食料品のような合理的な買い物基準の場合は男性寄りの看板イメージ。普段のスーパーでは販売していない付加価値を求める食料品などを扱うスーパーの場合は、女性寄りのイメージの看板が望ましい

とは言っても、何屋さんか分かりにくい看板は全てにおいて避けたほうが無難でしょう。

 つまり、看板もユーザーファーストで制作をするということになりますね。 

3-3.価格設定を上げて、サービスを見直してみることはできないか?

 商品戦略からの業績改善の2つ目の視点は「価格設定を上げて、サービスを見直してみることはできないか?」です。

 なぜなら、業績を改善しようと考える時には一般的な中小企業経営者は、「お客様が買ってくれないのなら価格を下げなければいけないのではないか・・・」と無意識で考えがちだからです。

 しかし、マーケティング戦略においても価格を下げる戦略は、市場の中のターゲットに自社サービスが提供できていて、さらに多くの市場を狙っていくときの戦略であり、まだ売れていない・まだお客様の目に留まっていない段階においては、他社には無い付加価値を加味して価格を高めに設定して販売するのがマーケティング戦略の基本だからです。

 また、価格を上げることで、経営者はより一層の本気のお客様に絞り込む眼を持てるようになり、価格を上げた分以上の良質なサービスを提供しようと思えるようになるでしょう。

 では、具体的に追加したい付加価値の一例とは?

具体的に追加したい付加価値の一例
①アフターフォローや保証を追加する
②商品の選択肢やトッピングを増やす(増やして、選び方を付け加えてあげる、もしくは減らして分かりやすくする)
③サービス量を増やす(もしくは減らす)
④おまけをつける(もしくは減らす)

 など、です。このようなことは、今日から今すぐ、どの会社でも比較的にすぐにできる「付加価値」ではないでしょうか。

3-4.メインサービスの前に、フロントエンドサービスを提供できないか?

 商品戦略からの業績改善の3つ目の視点は「メインサービスの前に、フロントエンドサービスを提供できないか?」です。

 具体的には、フロントエンドサービスは集客用のサービス、バックエンドサービスは収益用のサービスです。ただし、昔からの地域密着事業者の多くはこれを行っていないことがほとんどです。よくある例ですと?

よくあるフロントエンドサービスの例
①マッサージ初回のみ1,000円20分間(通常は1回4,800円45分間)
②居酒屋のランチ680円(夜は1人単価3,000円前後になりますね)
③無料ソフト(使用制限を解除するためには有料版へアップグレード)
④玉子焼き1切れどうぞ(あーん。おいしいでしょ)→(今晩のおかずにどうですか?1本600円)

など、です。

いきなり高額サービスを購入することはできないので、まず、はじめにお試し商品サービスのようなフロントエンドサービスを提供できないかを考えてみてはいかがでしょうか。

3-5.商品のライフサイクルを予測しながら、次の新サービスを開発できないか?

 商品戦略からの業績改善の4つ目の視点は「商品のライフサイクルを予測しながら、次の新サービスを開発できないか?」です。

 なぜなら、ある商品サービスが売れにくくなくなる時というのは、競合他社の商品サービスでも同じようなものが出てきた時と考えられるからです。

 そこで、そのような時が来る前から現在の商品サービスが標準化してしまうこと(自社と同じクオリティの競合他社商品が市場に蔓延してしまうこと)をイメージした上で、次にお客様が求めていることを考え、今の商品サービスにどのような新しい付加価値をつけていくかを具体的に考え、開発を行いましょう。

エキスパートコンサルタントが提案する新サービス7つの視点
既存サービスの欠点をリストアップする。そしてそれを補うサービスはできないかと考える。
②既存サービスに対して顧客が感じている不満をリストアップする。そしてそれを解決できないかと考える。
③既存サービスと相性の良い他のサービスをMIXすることはできないかと考えてみる。
④全く関係無い部外者にサービスに対する批評を求め、気づいていない気づきを得てみる。
⑤先入観が入っていない業務経験の浅い社員に、斬新な意見を求めてみる
⑥既存サービスと同等レベルのサービスを競合他社も既に作り上げているという前提で物事を考え、その時点での顧客の悩みを想像してみる。
⑦そもそも「既存サービスが要らなくなるサービス」は何かと考えてみる。

  上記を常に頭に入れておくだけでも、日々をイノベーションし続けることができるのではないでしょうか。


4.採用戦略

 次は「採用戦略」を見直していきます。採用戦略は、主に中長期的な業績改善の戦略になりますが、多くの中小企業には採用の戦略や重要性やポイントは、深い内容は、あまり知られていない内容でもあると感じてきました。

 そのため、中小企業では創業社長の晩年に「後継者が居ない…」等という悩みが経営課題ととして取り上げられることが多々ありますが、実は、経営者が若い頃からここで提案する「採用戦略」を理解して取り組んでいたら、そのような問題はかなり減るのではないかと思います。

 また、中小企業の事業の安定や事業の成長にもかなりのウエイトを占めるのがこの「採用戦略」でもあります。ただし、その効果が明確に表れるまでには、5年前後から10年以上かかる場合もありますので、即効性を求めるのではなく、中長期的な視点で取り組んでいきましょう。

4-1.会社の経営理念・経営ビジョン・価値観を設計できないか?

 採用戦略からの業績改善の1つ目の視点は会社の経営理念・経営ビジョン・価値観を設計できないかです。

4-1-1.経営理念とは

 経営理念とは、その会社を経営する上での理想・外せない考え方・行動指針・基本的姿勢などを指しています。特に、決まった形のルールがあるわけではなく、その事業を通して、経営者が「こうしたい。こうありたい。」と心の底から願っている抽象的概念を指しています。

 例えば、リフォーム事業者の場合なら?「いつもの暮らしの中で、たくさんの幸せを届けたい」など、というような表現方法にもなるでしょう。どちらかというと、天国的な発想になりそうですね。そして、抽象的であり天国的な経営理念は、社員が掲げる理想となり、社員を精神的にモチベートします。

4-1-2.経営ビジョンとは

 経営ビジョンとは、実際に、経営理念を実現するための、より具体的な方針を示すものとなります。

 例えば、リフォーム業者の場合なら?「◯◯◯の特長のある◯◯◯リフォーム工事で、◯◯◯市での市場シェア率No.1 年間◯◯◯件施工を目指す」もしくは、もっとゆるーくすると「◯◯◯リフォームで◯◯地区ナンバーワンを目指す」などとなりそうですね。経営理念が「天国的な発想」であったことに対し、「経営ビジョン」は、「この世的な視点」からの具体性を伴ったビジョンという認識が強いものです。そして、具体的な経営ビジョンは、経営目標に落とし込まれ、社員を現実的にモチベートします。

4-1-3.価値観とは

 企業における価値観とは、事業活動をする上で、外してはいけない考え方・行動様式から始まり、さらにその会社独自で大切にしてきた「考え方」や「行動様式」を指しています。俗に言うと「うちのやり方」や「うちの社風」と、表現されているものに該当すると思います。

 会社で大切にしている「価値観」を抽出して明文化していくことで、同じ業種であっても「他社ではなく、この会社で働きたい」というように、求職者に思ってもらうことができるようになります。

 また、その会社で働く意義を「経済的報酬」以外の部分でも考えられるようになり、職場内における不調和や、仕事の仕方に対するミスマッチを大きく減少させられるでしょう。

 以上が、「経営理念」「経営ビジョン」「価値観」についてですが、1人目の社員が会社に入社する前段階から考えていくことが大切であると今は言われるようになりました。

 念のため「経営理念」「経営ビジョン」「価値観」を設計していくことで期待できる効果も確認してみましょう。

「経営理念」「経営ビジョン」「価値観」を設計していくことで期待できる効果
①自社の「理念・ビジョン・価値観」に合わないミスマッチ採用を防げるようになり、会社の成長を促進できるようになる
②自社の「理念・ビジョン・価値観」をまとめることによって、代表の考えをまとめる効果もある
③上記の結果、採用競争力を高めることができる
④集客面においても、他社との差別化を感じてもらうきっかけにもなる
⑤働く社員にも、良い会社で働いていると感じてもらいやすくなる
⑥サービス提供の品質も向上し、お客様満足度も高まる
⑦結果的に利益が残るようになり、会社が未来へ投資できるようになり発展する
 このようなことからも、私は、中小企業や個人事業主さんこそ「経営理念」「経営ビジョン」「価値観」を早期に策定して、恥ずかしがらずに、求人広告やWEBサイトで表現していくことを伝えています。それが、採用戦略においても大切だからです。

4-2.理念&ビジョン&価値観マッチング採用だけに絞った採用を行っているか?

 採用戦略からの業績改善の2つ目は、「理念&ビジョン&価値観マッチング採用だけに絞った採用を行っているか?」です。

 その理由は、上記4-1.でも少し申し上げましたが、ミスマッチ採用を防ぎ、かつ会社の成長を実現するためです。情報社会になり、私は、中小企業の採用状況は、3極化していると感じます。

 1つ目の極は、情報社会に自社の「理念&ビジョン&価値観」を表現していくことで、「理念&ビジョン&価値観マッチング採用」の実践を加速させている中小企業です。

 2つ目の極は、情報社会で、「スキル」を中心に「より良い条件」を検索する求職者に振りまわれるごとくに、「スキル&条件採用」を加速させている中小企業です。

 3つ目の極は、旧来の求人観を崩せず、採用難であえいでいる中小企業です。

 上記の3つでは、言わずとも、「理念&ビジョン&価値観マッチング採用」を行っている中小企業がより良い会社を作り、成長を実現しているという状況を毎日のように目にしています。

 そして、「価値観」というのは、マッチしているか・していないかの二者択一であり、全員が自社の価値観にマッチしている状態を目指すことが、この「理念&ビジョン&価値観マッチング採用」の継続的な目標となります。

4-2-1.求人における比較基準を見てみる

 そもそも、求職者が求人広告を見て判断する比較基準は以下のとおりです。そして、採用力を最大化するためには、①×②×③×④を最大化させていくイメージを持つことが大切です。

①採用マーケティング力②待遇面③企業力
求人広告媒体給与企業規模
自社WEBサイト求人ページ休日企業イメージ
スカウト媒体勤務時間認知度
社員クチコミ紹介福利厚生財務状況
求人用会社案内等の紙媒体退職金

×

④経営理念・経営ビジョン・価値観

上記の表を見てもお分かりのとおり、④経営理念・経営ビジョン・価値観は、全てに対しての掛け算であるため、④がズレてしまうことで、全てがズレてしまうとも言いかえることもできます。

 ただし、現状、多くの中小企業では、忙しい今を解決するための「猫の手も借りたい採用」=「②待遇面だけの採用」を繰り返し行い、数年経ったら採用した社員は辞めているということを繰り返してしまっているのです。退社の理由は、上記の表から見ると、入社後に③と④を改めて理解し、ミスマッチだったことに気がつくからではないでしょうか。

そのような採用を繰り返している間に社長は着々と年を重ねていき、社長の高齢化と共にサービスも陳腐化していき、社員の定着も悪くなり、社員も徐々に高齢化していき、倒産・廃業というのがよくある中小企業の流れです。

 このような中小企業の倒産・廃業への流れを打ち破る方法のひとつが、社長が若い時期から「理念&ビジョン&価値観マッチング採用」だけを行うという『決断』になります。

 10年後、20年後を見た上で、今、「理念&ビジョン&価値観マッチング型採用」を実行することが極めて大切です。

4-3.自分(経営者)にとっての補完関係になる人材を採用できているか?

 採用戦略からの業績改善の3つ目の視点は「経営者にとっての補完関係になる人材を採用できているか?」です。

 中小企業経営者にとっての補完関係になる人材とは、経営者とは違う専門領域を持った人材であり、かつ。経営者の理念ビジョンに共感してくれる人材を指しています。

 採用の方法・ポイントは以下のとおりです。

 ①明確な事業ビジョンを描き、卓越した事業戦略を描くこと・・・これがその事業に取り組んでみたいという人を集める力になります。

 ②社長が他の専門領域に対して謙虚になること・・・中小企業社長はワンマン社長が多いものですが、他の専門領域に対して謙虚になることで、他の専門領域を持った人材を集める力となります。

 ③社長自身がその専門領域に対する学習も行うこと・・・自分と違う専門領域の人材のキャリアプラン等も考えていく土台として、ある程度、社長自身も学習をすることが求められます。

 ④自社の担当となってくれる人材採用会社・担当者さんを見つけ、現状の自社に入社できる人材イメージを明確にすること・・・「採用市場」の中で自社を見つめ、採用戦略を構想するためにも、人材採用会社の良い担当者さんを探すことも大切な要素となります。

これらを通して、自分(経営者)にとっての補完関係になる人材を採用できれば、ボトルネックを突破して、もう一段の成長を実現できるでしょう。

4-4.経験豊富な年長者を採用することはできないか?

 採用戦略からの業績改善の4つ目の視点は、「経験豊富な年長者を採用することはできないか?」です。

 経験が豊富な定年退職後の年長者は、即戦力になっていただきやすく、また若い方には無い知見を持っておられ、会社を発展させる力となってくれるケースが多々あります。

 また、実際に労働してもらう社員として雇用するだけではなく、パート社員として週に2日程度の勤務としても、「顧問のように経営の相談をするスタイル」で採用すること等も検討の余地があります。このような「高齢者採用」は、やり方次第では重要な人材採用戦略ともなりうるものです。

 あなたの会社でも、経験豊富な年長者を採用することはできませんか?


5.人材育成戦略

 次は、「人材育成戦略」を見直していきます。

 「人材育成戦略」と聞くと、外部企業での研修などに参加させることを想像される中小企業経営者の方も居るかもしれません。また、「人事評価制度」等を整備することを考えたり、社員1人ひとりのモチベーションをアップすることを考える方も居るかもしれません。

 ところが、業績が低迷する中小企業(主に年商1億円以下・全体の80%前後の中小企業)に求められているものは、もっともっと手前にある基礎的な事柄になります。それをここでは見直していきましょう。

5-1.組織図を明確にできているか?

 「人材育成戦略」からの業績改善の1つ目の視点は、「組織図を明確に出来ているか?」です。

 なぜなら、中小企業の社員が仕事に対するモチベーションが低いことの原因として、仕事自体が明確に定義されていないということが挙げられるのを、私はこれまで実体験として数多く見てきたためです。

 仕事を定義するためには、部門(部署)を分け、業務範囲を決める必要があります。業務範囲を決めるということは同時に組織図を決めることにも繋がります。その後「部門」の中で「役職」が出来、「部門の責任者」が決まります。

上図は一例として、小さな工事店の例ですが、中小企業の場合には、このような「組織図」が明確に定義されていないため、適切な職種の人材が集まりにくいことがほとんどなのです。

 そのような中小企業の経営者さんは、「採用しても、うちには良い人が来ない…」と言い、求人会社等の担当者から見ると「この会社はまだ会社が出来ていない状態」と見られる傾向があります。

 そのような状況の中小企業こそ、まず「組織図」をイメージし、「部門」「役職」「部門の責任者」を明確に設計していくことが大切です。(その後、次の「業務マニュアル」を作成していくという流れになります。)

5-2.業務マニュアルの作成ができているか?

 「人材育成戦略」からの業績改善の2つ目の視点は、「業務マニュアルの作成ができているか?」です。

 5-1.組織図と業務範囲でも述べましたとおり、組織図と業務範囲を設計したら、次には「業務マニュアル」の作成を行います。なぜなら、中小企業で人材が育たない理由は、基本業務を実行する流れが明文化されていないことだと考えられるからです。

 それでも仕事が回っていることがあったとしたら、仕事ができる人材が経営者の求める業務をあうんの呼吸で掴んで実行しているだけであることがほとんどではないでしょうか。しかし、そのような状況を打破するのが「業務マニュアル」です。

 業務マニュアルを作成することで、以下のようなことが期待できるでしょう。

業務マニュアルを作成することで期待できること
1.採用の幅が広がる・・・業務マニュアルができることで、これまで仕事を覚えることができなかった人をも採用することができるようになるため、採用の幅が広がります。
2.社員が成長するようになる・・・定型業務を覚える速度が速くなり、その結果、仕事の応用もできるようになり、結果的に社員の成長を実現できるようになります。
3.会社が成長するようになる・・・社員が成長したら、部下を育成できるようにもなります。すると、業務を部下に任せていくことができるようになるので、社長はさらに会社を発展させる仕事に取り組むことができるようになり、上司が育ち、会社が成長します。
4.社長のマネジメント能力も高まる・・・業務マニュアルがあることで、社長から社員への業務的な指示も、より分かりやすくなります。その結果、マネジメント時間・マネジメントコストも大幅に短縮されることになります。
5.自社の独自性が明確になっていき、他社との差別化も明確になっていく・・・業務マニュアルに則って業務を行うことで、仕事に対する正しいPDCAが起きるようになります。その結果、自社の独自性がさらに開花し、他社との差別化も明確になっていきます。

 

 このような業務マニュアルを作成するのは、中小企業の場合は社長の仕事となります。それ以外(社長以外)ではありません。なぜなら、社長が考える仕事が見える社員が居ないことがほとんどだからですし、社長が考える仕事を社員に共有していくことが大事だからです。

 作成の仕方は、まずはスプレッドシート(Excel)やドキュメント(Word)等へ以下のような「箇条書き」からスタートでOKです。

 上記を記載後、写真や説明等を入れる「マニュアル」を作成していくという手順で行ってみてください。

 よく、「どの業務からマニュアルを作成すればよいのですか?」というご質問をいただきますが、目標は社業全ての業務マニュアルを作成することとし、成果に直結する部分から作成していくことを目標にしてみてください。

 また、どのような中小企業でも会社の全ての業務をマニュアル化するとしたら、(詳細まで記載するのであれば)おそらく100P以上にはなるのだと思います。100P以上にもなる業務内容を口頭伝達とOJTだけで教えようとしてきたことを想像すると、ぞっとしますよね。

自社を深く考える機会になる!
社長は「業務マニュアル」をまとめる時間を通して、さらに自社を深く理解する機会が与えられます。自社を深く理解することを通して、自社を共有していくスピードも速まります。

 このようなことからも、中小企業社長は自分に与えられた時間の全てを事業に注ぐ気持ちで、まずは「業務マニュアル」の作成に力を入れましょう。

5-3.社員の仕事能力を「見える化」できているか?

 「人材育成戦略」からの業績改善の3つ目の視点は、社員1人ひとりの仕事能力を「見える化」できないか?です。

 なぜなら、社長は社員を「能力に合った最適配置を行う立場」だからです。そのため、どのような仕事能力を持っているのかを理解していなければならないからです。

 一方で、低迷する中小企業では、社員1人ひとりの仕事能力が目に見えないケースが多々あります。そこで「5-2.業務マニュアル」に合わせた「スキルチェックシート」なるものを作成して、社員の仕事能力を「見える化」していきましょう。

 これにより、正しい組織ができ、社員1人ひとりに対して正しい評価を与えることができるようになり、その結果、会社の発展に繋がっていきます。

 ですので、「5-2.業務マニュアル」が出来た後には、必然的に「スキルチェックシート」にもなるわけで、そのシートに基づき、チェックしていくことで、社員1人ひとりの仕事能力を「見える化」していくことが実現できます。

 また、参考までにですが、「スキルチェックシート」の作成方法と活用方法については、厚生労働省のWEBサイトより以下の資料を無料でダウンロードでき、とても参考になりますので、ご覧になってみてください。

(上記は、厚生労働省がWEBサイトから提供する資料「人材育成への活用方法シートPDF」です。)

5-4.部門ごとに「責任者」を任命できているか?

 「人材育成戦略」からの業績改善の4つ目の視点は、「部門ごとに必ず全てに責任者を任命できているか?」です。

 なぜなら、中小企業が低迷している時、もしくは事業のボトルネックに差し掛かっている時、各部門の責任者を任命していないことが多々あるからです。各部門の責任者を”任命しないこと”は結果的に社長が兼務していることになります。

 会社の小さな時期はそれでも良いでしょうが、会社が成長すると同時に、徐々に、それぞれの部門の責任者=部長(課長・係長・主任・・肩書は適切に検討)を任せていくことが求められます。いわゆる、社長の仕事(権限と責任)を部下に任せていくということになります。これが停滞のボトルネックを突破する方法となり、責任者を任せていける範囲で会社は成長していきます。

 そのためには「それぞれの部門の責任者」が行う「業務マニュアル」も、まとめていく必要性があるということになりますが。

5-5.責任者を変えられないか?

 「人材組織戦略」からの業績改善の5つ目の視点は「責任者を変えられないか?」です。

 中小企業が低迷している時、もしくは事業のボトルネックに差し掛かっている時、残念ながら責任者がその仕事を果たしていないということもよくあります。そのような時には、早期に責任者を変えることが経営上、賢明な判断となります。変えるシグナルは以下のとおりです。

中小企業によくある責任者変更のシグナル
 ①その「責任者」は直上の指示に従うことができない
 ②その「責任者」は継続的に部下からの愚痴が出る
 ③その「責任者」は仕事での成果を挙げられない

 これらの時に、中小企業社長は身近な人などに「その責任者が仕事ができないこと」に対して愚痴を漏らしていたりする傾向も高くあります。そのようなシグナルが出ている時には、潔く「その責任者」を変える決断をすることが求められます。

 変えるタイミングは、特に業績が悪化している時であれば、月や期の替わり目等のタイミングを待たず、できる限り早いほうが良いでしょう。

 また、その責任者の替わりの人材が居ないから替えることができないというケースもあります。そのようなケースでは、有無を言わず社長がその人に変わって「責任者」を兼務することをおすすめします。

 このような人事に対して、中小企業経営者は誰にも聞くことができませんが、「自分がこの事業を通してやるべきこと」を明確にした上で、自らの直感に従ったほうがよいでしょう。その直感が間違っていなければ、社員の皆様からの「反対意見が無い」という賛同を得られるはずだからです。

 


6.会計戦略

 次は「会計面」から「経営戦略」を見直していきます。前半は「PL・・損益計算書」に関わる部分、後半は「BS・・貸借対照表」に関わる部分の見直しのポイントを提案していきます。

6-1.経費の見直しができないか?

 「会計戦略」からの業績改善の視点の1つ目は「経費の見直しができないか」です。

 これは多くの経営者や会計事務所がまず最初に着目する点でしょう。

 その中で優先すべき項目は「会議費」「接待交際費」「福利厚生費」です。ただし、これらだけでは、見直せたとしてもたかだか数パーセント。業績低迷の根本的な解決方法にはなりにくいものです。本当の原因はここにはありませんので、以下を順番に見ていきましょうね。

6-1-1.「地代家賃」の見直し(事務所・店舗の移転はできないか?)

 次の経費科目の見直しは「地代家賃」です。

 業績が低迷する時に事業にマッチしていない大きな店舗、広いスペースを借りているケースも多々あります。

 また、一方で店舗が必要なビジネスモデルにも関わらず店舗の場所が悪いというケースもあります。

 これらの場合には、事務所・店舗を見直すことが重要です。

 ただし、広すぎる場所から小さな場所に移転することは容易であったとしても、「店舗の場所が悪いので良い場所に移転をする」という点は、経営戦略的な視点が必要になるため、経営コンサルタントの専門家等に相談をした上で、意思決定をしていただくことをおすすめします。

店舗の移転は?
 事務所・店舗の見直しは地代家賃を下げるだけではなく、戦略的に検討することで、売上にも好影響を与えることができます。

6-1-2.「先行投資」の見直し(社長が受けている研修・コンサルティング等)

 次の経費科目の見直しは、社長が使う「研修」「セミナー」等の「先行投資」です。

 中小企業にとって他社情報などの経営情報を得ることは重要な情報収集であり、経営者にとっても大切な学びの1つでもあるので、全てが無駄とは言い切れませんが、本業との関わりが薄いと思われるものは見直しをする必要性はありそうです。

 私は、どんな業種でも業績を向上させる最短距離は「経営者が自らの事業と真正面に向かい合うこと」という原理原則を、信じて疑いません。

6-1-3.「広告宣伝費」の見直し

 次の経費科目の見直しは「広告宣伝費」です。

 事業全体の経費の中でも大きく影響を与えやすいのが新規客を集めるための「広告宣伝費」です。「広告宣伝費」を見直すためには、全ての広告媒体に対する「反響・契約データ(CPO・CPR)」を記録している必要性があります。それにより、有効的な広告を選定していきます。また、「反響・契約データ」を記録する前のテストマーケの段階であることもあります。
 その場合には、予算観を持ってテストマーケをしていくことを再度検討していきます。

6-1-4.「人件費」の見直し

 次の経費科目の見直しは「人件費」です。

 「人件費」の見直しは、比較的反論を頂きやすい科目でもありますが、経営コンサルタントとして数多くの中小企業様を見てきた中で、見直す点は以下の2点です。

 ①過剰人員となる営業担当者がいないか?
 ②過剰人員となる事務担当者がいないか?

 「5-1.組織図」を構想した上で、過剰人員となっている人材に対する見直しを行う必要があります。しかし、ここでよくある反論は次のとおりです。

 「その人をクビにしたらかわいそうだ」
 「コンサルタントのあなたは人情味も無いのか」

 です。しかし、それに対する私からの反論は以下のとおりです。

 「業績が悪い会社で雇い続けるほうが、その人の人生に対して申し訳ない」
 「その人が活躍でき、今の会社より多くのお給料をもらえる企業を探せば必ずある」

 このような概念に基づき、過剰な人材を雇用してしまっていたら、『天下の適材適所へ異動してもらう(転職してもらう)』ことを考えてみてください。転職後のほうが幸せな環境が与えられたりすることもありますので。

6-1-5.保険料の見直し

 次の経費科目の見直しは「保険料」の見直しです。保険の見直しは以下の2点です。

 ①不要な掛け捨て保険の見直し(低プランへの見直し・もしくは解約)
 ②掛けすぎている資産形成保険(退職金用の保険など)の見直し

 です。現実的には、頼りにしている税理士先生・会計士先生に経営の相談をしていくことで勧められて入ってしまうことが多く、その結果、業績が不健全になるという本末転倒の悪循環が起きていることが多くあります。

 私が接する限り、かなり多くの割合の方々が、内部留保も無いのに、退職金用の保険を多額に掛けていたりします。その上でひどいケースは、その保険の資産計上されている金額以上の借入金が同時にあることです。経営として本末転倒と言わざるを得ません。

 中小企業の原理原則としては、まず「現金(流動資産)を手前に置いておくこと」であるため、現金が無いのであれば、退職金用の保険などは一時解約し、まずは手元現金を貯蓄していくこと(利益剰余金を貯めていくこと)を目標にしていきましょう。

6-1-6.役員報酬の見直し

 次の経費科目の見直しは「役員報酬」です。

 役員報酬の見直しのポイントは以下の1点です。

 ①法人の利益以上の役員報酬を何年も継続して取っている・・・これにおいては、役員報酬より法人の利益額のほうを多めに設定したほうが良いというのが2021年時点での私の考えです。なぜなら原則的に法人税よりも所得税のほうが高いため、役員報酬が多すぎることにより納税額の面で不利になってしまっているからです。(応用はいろいろあるとしても、まずは原則的な点として)

 ただし、最低限生活を保障できる役員報酬は必要ですので、それ以下に設定するということではありません。あくまで、役員報酬を高くしすぎている場合の点についてのみ、ここでは訴求しています。また、この「役員報酬の見直し」は事業を長く健全に発展繁栄させていくことを前提にした改善提案です。

以上ですが、その他の細かい点(通信費の見直しなど・・・)はそれぞれの会社様でもお気づきのはずです。経営戦略的に経費においては上記をベースによく考え、見直していきましょう。

6-2.仕入れ先・外注業者(原価)の見直しができないか?

 「会計戦略」からの業績改善の視点2つ目は「仕入れ先・外注業者(原価)の見直しができないか」です。

 ①仕入れ先に対する仕入れ金額の交渉
 ②仕入れ先の変更
 ③仕入れ商品の変更
 ④外注業者への発注金額の変更
 ⑤外注業者の変更

など、です。往々にして1社のみに発注している状況が続くと甘えが出てきて、原価が高くなる傾向にあります。

ですが、すぐに値下げ交渉をしたり切り替えると波風が立ちますので、中期的戦略に基づき水面下では別の業者発掘・商品発掘を計画的に実行いたしましょう。できれば、発注先と協力業者は毎年見直しをしていく目標を立てましょう。

中小企業の場合は、この「仕入れ・外注業者の見直し」業務も社長の重要な仕事となります。

6-3.新品ばかり購入していないか?

 「会計戦略」からの業績改善の3つ目の視点は「新品ばかり購入していないか?」です。

 特に、自動車・作業車を活用する業界の場合、新品ばかりを購入している会社と、中古でうまく回している会社では10年間程度の時間が経過すると、内部留保が数千万円単位の差になっていることが多々あります。

 新品(新車)を購入する経営者は「長く乗って元を取る」と考えていることが多いかと思いますが、会計面を見た時に元は取れておらず、中古で回ししている会社のほうが内部留保(利益剰余金)が残っているのが私が見てきた現実です。

 新品には「バリュー(付加価値)」が乗っている分高い金額を支払わなければなりませんので、できる限り中古を買い、大切に長く使用するように心がけていくことが、会社にお金を残していく適切な方法であると考えます。

6-4.社屋・店舗を購入しないよう気を付けているか?

 「会計戦略」からの業績改善の4つ目の視点は「社屋・店舗を購入しないよう気を付けているか?」です。こちらも、健全な貸借対照表(BS)を作るための改善提案です。

 原理原則として「自社社屋・店舗は自社で持たないこと」が理想的です。

 その理由は、事業を発展させている経営者は以下のように答えられます。

 ①事業は時と共に形が変わるが、社屋を持ってしまったら事業の柔軟性が無くなるため
 ②社屋は売りづらい不動産であるため
 ③経営規模相応の内部留保を蓄えておかなければならないが、事業が成長した頃に流動資産を固定資産に変えてしまうことで成長した組織を守るキャッシュが無くなるリスクとなるため

 ある時まで業績が好調であり、少しずつ内部留保が貯まってきた時に、自社ビル・土地を購入し、その後業績が低迷していくというのは、現在でも起きている「中小企業の失敗の典型的パターン」でもあるかもしれません。

 業績が好調で内部留保が貯まってくると自社ビルを購入してしまう理由は以下のとおりです。

 (その1)銀行等から声がかかるから

 (その2)店舗が増えたりすると、地代家賃も大きな額になってくるので、1まとめにしたほうが良いのではないかと考えるため

 しかし、現在2020年~2021年のように、いついかなる時に突然先が見えない環境になることもあるので、その時を想定し、なるべく「現金」を持ち続けておくように心がけておきましょう。

 それでも、どうしても利益で不動産を購入したい場合には社長の自宅などの住居などをおすすめしています。自宅であれば、万が一の時には売却することも可能だからです。

6-5.内部留保目標を持っているか?

「会計戦略」からの業績改善5つ目の視点は「内部留保目標を持っているか」です。

 「内部留保」とは、企業が企業活動で上げた利益を蓄積した分(資金)を指します。いわゆる、法人の「貯金」「プール金」です。この内部留保目標を持つとは、「会社の中にいくらのお金を貯めていくのか?」という目標を持つことを指しています。

 私が経営コンサルタントとして提示している目標は「年商の50%の内部留保を蓄えましょう」です。

具体的な内部目標は以下のとおりです。

具体的な内部留保目標
・年商3000万円であれば1500万円の内部留保をまずは目標に
・年商1億円であれば5000万円の内部留保をまずは目標に
・年商2億円であれば1億円の内部留保をまずは目標に

 そして年商の50%が貯まってきたら年商1年分を目標にしていきましょう。

 このような目標を持ち実現していくと、どの会社の社長でも次第に経営に自信を持つようになり、その自信が社長の雰囲気に現れ、その結果、良い社風になり、良い人材が集まるようになり、事業も成長していくでしょう。

 なぜこのようなことが起きるのかと思われるのなら「逆」を考えてみるとお分かりただけるはずです。資金繰りが厳しい時には、社長も切羽詰まっており、良いアイデアもなかなか出ず、社員に対してもいつも以上に厳しく接してしまったりしてしまいます。その結果、窮屈な雰囲気の会社になり、成長が実現できないということになるからです。

 このようなことからも、企業がしっかりと内部留保を蓄えていることは働く社員に安心を与え、その結果、成長に繋がっていきますので、明確な内部留保目標を持つことが大切だということです。


7.経営計画

「経営計画」とは、「経営ビジョン」に基づく「経営目標」を実現するための「計画」です。主に、「長期」「中期」「短期」で考えることが多く、長期経営計画は5~10年前後を想定、中期経営計画は3~5年前後を想定、短期経営計画は1年を想定しています。

 特に中小企業の場合は、「短期経営計画」を立てることから始め、慣れてくるに従って「中期経営計画」を立てていけるようになるのが1つのセオリーです。

 ですが、ここでは、まずは“短期経営計画を一度も立てたことが無い中小企業様”を想定したチェック項目をご提案いたしますね。

7-1.過去3年分の『売上実績表』を作成してみる

 「経営計画」からの業績改善の1つ目の視点は、「過去3年分の『売上実績表(月次推移)』を作成してみる」ことです。

 なぜかというと、過去3年間の『売上実績表(月次推移)』を作成することで、現状をある程度、把握することができるからです。現状、言い換えると『現在位置』が分かることで、次に正しい目標を立てることができるようになるからです。

 作成する売上実績表(月次推移)は、商品や部門ごと、そしてKPI(key performance indicator)を含めたものが理想です。

 つまり、商品ごとの過去3年間の月次売上や、部門ごとの過去3年間の月次売上、過去3年間の販売数、過去3年間の見込客数(月次推移)など、自社の経営を形作っている売上・KPIを明確にしていくことで、必ずやるべきことが見えてくるからです。

7-2.損益計算書と貸借対照表の過去5年間比較をしてみる

 「経営計画」からの業績改善の2つ目の視点は「損益計算書と貸借対照表の過去5年間を比較してみること」です。

 「損益計算書」からは、「売上」「原価」「人件費」その他の経費などを見ることで、自社の適正な「損益モデル」を分析でき、それぞれの勘定科目の売上に対する比率目標を立ていくことができるようになるからです。

 「貸借対照表」からは、「流動資産」や「利益剰余金」の目標や、「借入金」の返済目標、「売掛金」の回収期間目標など、会社の財務面を強くするための目標を立てることができるようになるからです。

 これらを行っていくことで、「健全堅実経営」に近づいていくことでしょう。

7-3.退社社員の退社原因を振り返ってみる(過去5年間)

 「経営計画」からの業績改善の3つ目の視点は、「過去5年間の退社社員の退社原因を振り返ってみる」ことです。

 退職当時は見えなかったことでも、何年か経過した後なら、その当時の退職理由等を客観的に考えることができることもあります。その多くの理由はざっと以下のとおりです。

社員の退社理由
・経営ビジョン面・・・経営ビジョンへの共感が取れていなかったため
・マーケティング面・・お客様が少なくなり、十分な仕事を与えられなかったため
・採用戦略面・・・・・業務特性(能力面)でマッチしていなかったため
・人材育成面・・・・・業務マニュアルも整備されていなかったため業務指導が十分に出来なかったため
・人材育成面・・・・・処遇面などに不備があったため
・組織面・・・・・・・合わない上司と合わせてしまったため

などなど。

これらを冷静に振り返ることで、今後の「経営計画」に落とし込む「経営課題」がより明確になります。

7-4.「経営ビジョン」を振り返ってみる(過去5年間)

 「経営計画」からの業績改善の4つ目の視点は「過去5年前の経営ビジョンを振り返ってみること」です。

 それにより、何が実現でき、何が実現できなかったのか、また、それぞれの理由は何だったのかを振り返ってみます。すると、短期的な視野では見えなかった「経営課題」が見えることもあります。

 毎年努力しても全く実現できなかったことについても、そもそも、やり方を根底から変えたほうが良いのか、そもそも、その当時からの「経営目標」の設定自体が間違っていたのではないか、など、なんらかの「ボトルネック要因」を発見してみることに力を入れてみてください。

7-5.現在の経営課題を書き、理想の未来の会社の状況も書いてみる

 「経営計画」からの業績改善の視点の5つ目は、「現在の経営課題を書き、理想の未来の会社の状況も書いてみる」です。

 このコラムをここまで読んできていただいたあなたは様々な経営課題が見つかったことと思います。そこで次は、以下を実習してみてください。

ここで実習!-アクションプラン-
①ここまで出てきた自社の経営課題を一覧表に書き出してみる
②上記の課題を1つ1つをクリアしていく目標を立ててみる
③それと同時に、これからどのような会社にしたいのかを書き出してみる

 最初はたくさんの経営課題があるように感じたとしても、まず実行していくことから始めましょう。経営課題がたくさんあることは悪いことではありません。会社が未来に向かってがんばっている証拠です。むしろ、経営課題を社長1人で抱えるのではなく、社員の方々と共有して課題に取り組んでいき、よい会社を作っていくことを心掛けていきましょう。

7-6.簡易版・単年度経営計画書(A4・1枚)を書いてみる

 「経営計画」からの6つ目の業績改善の視点は「簡易単年度経営計画書」(A4・1枚)を書いてみることです。以下のリンクからダウンロードしてみてください。

 この役目は、まず「経営の方向性」を明確にすることです。これにより「自社の強み」が段々と見えるようになっていきますし、間違っていた場合にもスピーディに「方向転換」を考えるきっかけが与えられるからです。

7-6-1.経営計画書に記載する内容

 中小企業が、はじめて書く「経営計画書」に記載する内容は以下のとおりです。
 ・経営ビジョン
 ・経営理念
 ・今期のスローガン
 ・全体経営数値目標(売上・主要KPI・原価率・営業利益・利益剰余金)
 ・現在の経営課題の解決とGOAL

簡易版・経営計画書(Word)
簡易版・経営計画書(PDF)

 

7-6-2.はじめての経営計画書の書き方

 中小企業の場合は、精密な「経営計画書」を書こうと思うのではなく、まずは、現状からどのような方向性を目指すのか?を明確に書き始めていくことをおすすめしています。

 一般的な「経営計画書の書き方」などのセミナーに行くと、事業規模が大きな会社を対象にしている内容が多く見かけられます。そのため、

 ・中小零細企業にとっては経営計画書は難しいものだ
 ・もう少し大きくなってからでないと経営計画書を書くことはできないのだ

などと、大半の方が誤解をされています。そうではなく、まず、自社に合ったシンプルな経営計画を書くことから始めてみてください。そのうち、徐々に、書いておきたい内容が増えてくるはずだからです。

 このように、中小企業の経営計画書は、世間一般的な形に囚われることなく、今の自社に必要な課題と目指すべき未来を明文化することに重点を置いていきましょう。

7-6-3.適宜ズレを修正することを心掛ける

 そして、書いたら、PCやデスクの中に閉まっておくのではなく、見える場所に掲示する・毎日見つめることを通して、ズレていたと感じたらすぐに修正するを繰り返しましょう。

 私が経営コンサルタントとして、中小企業の経営者さんに今どきの経営計画書の位置づけとしてお伝えしていることは「何があっても、最初に決めた目標どおりに行くことが大事なのではなく、自動運転自動車と同じで障害物を察知すると同時に微調整をするように、日々に微調整をしながら前進していくこと」ということです。

 それがたとえ、最初決めた道と全く変わってきてしまっても、経営者自身が心からコミットメントをして行うことが一番経営成功の確率を高めますので、時には、社長自身の経験から導き出される「直感」に従うことも大切です。

 ただし、その時には独断で即判断するのではなく、決断する前には身の回りの社員に話してみて、社員からのフィードバックもよく聞いてみてください。ここで社員の意見を聞く意味としては、社員の意見で判断をするのではなく、社員の意見を元に、社長自身自分の考え方を客観的に見つめるというニュアンスが強いと思います。

 以上が、「経営計画」からの業績改善の視点となります。


8.経営者のブレイクスルー

 最後には、「経営者自身のブレイクスルー」について考えてみます。

 経営者は、起業の時には誰しも革新的であったにも関わらず、事業が発展することで、その業界に埋没してしまい、いつしか時代遅れとなっている自らの思考にも気が付かなくなってしまう可能性があります。その結果が、事業が10年以上持たないという理由であったり、経営者が中高年になってから事業の成長が鈍化する理由でもあると、私は思います。

 特に、若い時期に一段事業を成長させた経営者ほど、その当時の成功が固定概念化しないためにも「自分自身のブレイクスルー」が大切であると考えております。

 そこで、「経営者自身のブレイクスルー」の方法を以下に提示します。

8-1.日本国内全ての同業他社を調べてみる

 「経営者のブレイクスルー」の1つ目の視点は、「全ての同業他社を調べてみる」です。

 具体的な調べ方は、インターネット検索等で北から南まで全て調べていくことです。これを行うことで期待できる効果は以下のとおりです。

 ①ユニークな同業他社を発見することができる
 ②多くの同業他社は似たようなことを考えていることを理解することができる
 ③これらの結果、自社独自の魅力や自社がやりたい方向性なども見えてくる

 現実の今の業界を、再度見つめ直すことで、地に足がついた経営を考えられるようになるでしょう。また、漠然とした不安から解放されるのではないでしょうか。仮に業績が低迷している時期などは、時間があるわけなので、セミナー等に参加して断片的な情報だけに満足するのではなく、実際に自分自身の目で同業他社を見てみるということも大切な情報収集です。

8-2.To Do Listの整理を毎朝実行する

 「経営者のブレイクスルー」の2つ目の視点は、「To Do Listの整理を毎朝実行する」です。

 なぜなら、業績が低迷している経営者は思考が混乱してしまっていることもよくあるからです。思考の混乱を解きほぐすためには、まず「To Do List」の整理から始めましょう。

 ①自分がやるべきことをスプレッドシートなどに一覧に書き出します。
 ②期日が決まっているものは、実行する日をカレンダーに入れます。
 ③毎朝確認します。(日々に新しいTo DO Listが増えてきて、優先順位が日々に変わることがあるからです)

 これは、経営者の基礎訓練のようなものだと位置付けてまずは実行していきましょう。

8-3.混乱に対する自分なりの対処法を構築する

 「経営者のブレイクスルー」の3つ目の視点は、「混乱に対する自分なりの対処法を構築する」です。

 なぜなら、業績が低迷してしまう経営者は能力が無い場合だけではなく、混乱に巻き込まれてしまい、本来の力を発揮できなくなってしまうというケースも比較的多くあるからです。

 そこで、私が接してきた経営者自身の代表的な混乱と対処法を以下に記載しておきます。

経営者の混乱対処法
自分の時間の「キャパオーバー」冷静にカレンダーに記載していくことで自分の時間感覚を掴むことで解決していく
自分の能力の「キャパオーバー」自己の能力を見極め、不足している知識の習得目標を持つ
予期せぬ人間関係のトラブル(社員・お客様)人が集まれば多少のトラブルはつきもの。「心の修行」と思って焦らず解決する
お金の不安日頃から管理会計を行っておき、月次決算での利益が出る経営スタイルを目指す
家族の問題避けられない魂修行だと思って受け入れ、それでも家族を愛する

 繰り返しになりますが、全ての中小企業経営者が仕事能力が足りなくて業績向上を実現できないのではなく、仕事能力以外の面でのいろいろな障害が発生するため、業績の向上を実現できないというケースが多く見られてきたということでもあります。

 その混乱に対する対処法というか、その「いなし方」(相手の力・トラブルが、自分が進む前進方向を妨害しているのであれば、その方向から反らすテクニック)「受入れ方」が経営者にとっては必要でもあると感じております。

 これは、経営者が経営者人生の中で、自分なりのコツを体得していくことしかないと思います。

8-4.体を鍛える

 「経営者のブレイクスルー」の4つ目の視点は「体を鍛える」です。

 なぜなら、人間は誰でも加齢と共に肉体が衰え、活力・意欲が落ちてきて、若い時期ならたいした問題ではないと感じるようなことに対しても、中高年になるとストレスを感じるようになってしまうようになり、経営を前進させる力を失ってしまう傾向にあるからです。

 経営者が体を鍛えるために、もっとも有効的なものは「パーソナルジムでのウエイトトレーニング(週1回程度)」であると、私は考えています。その理由は以下のとおりです。

 ①ウエイトトレーニングは常に自分の限界にチャレンジさせられることから経営とよく似ている
 ②パーソナルジムのコーチに指導を受けることで経営者としての慢心も防げる
 ③常に体調面を客観的に観てもらうことにより生活習慣病や大病などの予防にもなる
 ④室内で行うため雨天でも関係なくできて継続性が高い
 ⑤チームスポーツではないので他人に気兼ねせず自分1人で取り組むことができる
 ⑥年齢的な制限はないので何歳になってもできる
 ⑦体が魅力的になればマネジメントにも良い効果をもたらす

 これらのことから、経営者が体を鍛えるのなら、私はウエイトトレーニングをおすすめしています。

8-5.情熱を高める工夫を行う

 「経営者のブレイクスルー」の5つ目の視点は、「情熱を高める工夫を行う」です。

 なぜなら、私は経営コンサルタントとして、全く同じ業種で同じサービスを提供している経営者の方々を同時に何人もコンサルティングをしてきましたが、全く同じ内容を指導をしても、情熱が高い方のほうが成果が上がる確率が高いということを何度も経験してきたからです。

 つまり「経営戦略」などのノウハウも重要ですが、それ以上に経営者の情熱が高いことが大切でもあるということです。

 では、情熱はどのようにしたら高まるのでしょうか?これは私自身の私見と経験則にもなりますが。

 ①情熱の高い人と接する
 ②自分の専門領域を磨き続ける
 ③自分の人生を振り返り、自分のやるべきことを明確に探し出す
 ④自分の人生の最後の日を予測して、その日までにどのような人生を生きていくかを考え、答えを出す

 一般的には、情熱の高い方というとスポーツ選手や歌手などを想像することが多いかもしれません。そのため、情熱を高めるためには、スポーツを行なったり、カラオケを行なったりすることと思われている人も少なからずいるように感じます。

 しかし、必ずしもそうではなく、仕事面において、情熱的な人と接することを考えてみてください。「情熱的なコンサルタントを雇う」ことも自らの情熱を維持するための方法の1つかもしれません。

 また、意外にも感じるかもしれませんが、オタクと呼ばれる方も専門領域を追求している方なので高い情熱を持っていたりします。

 まずはそのような人と接することからはじめ、彼らと同じく「自分の専門領域を磨き続けること」を意識し、その後、自分の人生の生き方を明確に決めていくことで、人からは「情熱が高い人」と見られていくようになるのではないでしょうか。

8-6.肩書・経歴を作り直す

 「経営者のブレイクスルー」の6つ目の視点は「肩書・経歴を作り直すこと」です。

 それが必要な理由は以下の2つです。
 ①普段見ている当たり前の世界を「新しい自己」で見つめ直すことにより、これまで発見できなかったものを発見できるようになるから
 ②周りからの見られ方が変わり人間関係構築が替わり、仕事の流れが変わるから

 具体的に、私の肩書は以下のように変えています。

「塗装屋さんのチラシマーケター」「塗装店の経営コンサルタント」「経営コンサルタント」(建築塗装業界出身)

 また経歴は以下のとおりに変えています。

“塗装屋さんのチラシマーケター時代(2010頃)”

「チラシ1枚でお客様の行列をつくる塗装屋さんのチラシマーケターとして◯◯◯店舗へのマーケティング指導実績を持つマーケティングコンサルタント。◯◯◯◯というマニュアルをまとめて腕の良い塗装屋さんの業績向上を支援。日本建築塗装職人の会の主宰」

“塗装店の経営コンサルタント時代(~2015年頃)”

「エリアマーケティング・WEBマーケティング・人材採用組織戦略などを通して塗装店経営を指導する日本で唯一の塗装店経営に特化した経営コンサルタント。「職人の会式塗装店経営」は日本全国◯◯◯社の塗装店が取り組む業界のスタンダードとなっている。「工事店経営の教科書」(ダイヤモンド社)をはじめ、塗装店経営に特化した経営ノウハウを体系化し、塗装業界の健全発展を支えている。日本建築塗装職人の会会長。社会文化功労賞受賞(2012年度)」

“経営コンサルタント時代(2016~現在)”

「高額商材のためマーケティング&営業困難・不人気業界のため人材採用困難&教育困難・見積方式の工事のため管理会計力を求められる塗装店経営で培った『健全堅実経営戦略』、言い換えると『100企業型経営戦略』を通して、地域密着型の中小企業に健全経営を指導している。また、現在も日本建築塗装職人の会会長を兼任しながら、他業界への経営指導も行う実践派の経営コンサルタントである。社会文化功労賞受賞(2012年度)エキスパートコンサルタント養成プログラム開発」

 創業の時と同じ肩書を30年経過した今でもつけている中小企業経営者も居ます。そうではなく「新しい未来」を創造していくのであれば「望んでいる新しい未来」から逆算した「新しい肩書」と「新しい経歴」を考案していくことが、ここで求めていることです。(*私の例はあくまで参考例としてください。)

8-7.髪型・服装を変える

 「経営者のブレイクスルー」の7つ目の視点は、「髪型・服装を変えること」です。

 どちらかというと、すぐにでも変えたほうが良いのは髪型です。できれば、その時、その時、流行っている髪型に変えていくことをおススメしています。(丸坊主の私が言うには説得力が無いですかね…笑)

 20代の時の髪型を50代・60代・70代になっても行っている弊害は、今どきの若い方々から「古い人」と思われてしまいやすく、若い人の心を掴みづらいということです。すると、採用やマネジメントにも悪影響を与えないとも言えません。

 また、服装においても日本人は特にまわりの人や同じ業界の人と似たようなファッションをしがちです。私が子供の頃は、「大人になったら黒いスーツを着なければいけないのかな」(大人は皆、黒いスーツを着ているので)と思い込んでいましたが、本来、自分が着たいスーツを着ても良いわけですよね。

 特にスーツにおいては、日本人は目立たないことをモットーにしているようであり、自分が好きなスーツを着てみるだけでも目立つようになり、注目を集めることができるようになります。注目を集めることができれば、その後、人を集めることにも繋がります。

 このように、ごく身近にあることで、多くの人が気が付かない業績向上のヒントが、「髪型・服装」であると理解していただき、実践をしてみてください。

8-8.オフィスのレイアウトを変える

 「経営者のブレイクスルー」の8つ目の視点は「オフィスのレイアウトを変えること」です。実際、オフィスのレイアウトを変えることで得られる効果はたくさんあります。

 ①席が替わることで、モノの見方が変わり、新鮮な眼を持つ
 ②レイアウトを変える際に、要らないモノを処分(断捨離)でき、その結果、未来へ前進する
 ③レイアウトを変える時に、組織図を考え直す機会になる
 ④レイアウトが変わると社員のモチベーションも上がる
 ⑤沈殿する空気の流れを変えることもできる
 ⑥古くなったデスク・チェアを新調してもOK

 成長する企業の場合、席替え・模様替えが頻繁に行われております。一方で、低迷している中小企業は30年以上も前の環境の状態のまま継続していたりします。「場」の流れを変えるために、オフィスのレイアウトを変えることは特効薬的でもあるので、月に一度目安で実行してみましょう。

 以上が、「経営者のブレイクスルーからの業績改善の視点」です。経営者の「思考」を変えることが業績の向上に繋がりますが、「思考」を変えるためには、セルフイメージや環境や行動を変えることが重要であるという視点からの提案でした。


9.まとめのマインドセット

 いかがでしたでしょうか?ここまでをまとめると、以下の3点に集約されると私は思います。

9-1.「日々に小さなイノベーション」を起こし続けよう。

 大きなイノベーションをどう起こそうかと考えるのではなく、日々に小さなイノベーションを習慣としていくこと。そうすることで、そのうち必ず、自社のコアコンピタンスが明確に顕現化してくることになるからです。日々に小さなイノベーションをしないということは、いつか痛みの伴う大きなイノベーションをしなければならない日が来るのだと理解して。

9-2.他社を見つめるよりも「自社の強み」を見つめ「自社の強み」を育て続けよう。

 競合他社やノウハウ書などを見すぎるのではなく、「自社の強み」を見つめ、「自社の強み」を育て続けましょう。このコラムでの内容を実践していくということは「自社の強み」を育て続けていくことでもあるのではないでしょうか。

9-3.「今やるべきこと」をやり切る。その先に新しいことがあるのだから!

 新しいことをやろうと考えすぎる前に「今やるべきこと」をやる。お客様が求めているのに、「今やれていないこと」をしっかりとやる。その先に必ず、新しいサービスのヒントがあり、新しい発展があると考えています。

 長年経営を行っていると、時に、自社がこれから行く先は「行き止まり」のように見えることがあるかもしれませんが、その時には、本コラムのアクションプランを1つ1つ見直し実践してみてください。

コメント

このようなお悩みを
お持ちではないですか?

  • 塗装屋として独立したいが、何から行ったら良いのか分からない
  • 元請けに転換したいが、相談できる人がいない
  • もっと自分たちが提供している良い仕事を、多くのお客様に届けたい
  • 会社が将来的に成長していけるのか不安だ
700社以上の塗装屋を成長へと今も導き続けてきている「日本建築塗装職人の会」があなたをサポートします。
お気軽にご相談・お問合せください。

日本建築塗装職人の会は、塗装業界の健全発展、建築業界の健全発展を実現したいと考えている任意団体です。
日本建築塗装職人の会の武器は、これまで15年間700社以上の経営指導実績の中で培ってきた独自の経営スキーム「職人の会式 塗装店経営」です。
このスキームを通して、先が見えづらいと言われている時代の中で本当に大切なもの、本当に価値ある塗装工事店や塗装職人さんを残していきたいと考えています。

1人で悩んでいませんか?
職人の会本部にお気軽にご相談くださいね。
無料ダウンロード メールでご相談
1人で悩んでいませんか?
職人の会本部にお気軽にご相談くださいね。
お電話でご相談 メールでご相談